IS最終局面と中東情勢2019
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ISの脅威なき後の中東に浮かび上がる対立構造とは?
IS最終局面と中東情勢2019(2)IS解体後の勢力図
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ISの脅威なき後の中東はどうなるのか。答えは明らかだ。アメリカは再びイランとの対立姿勢を強め、イスラエルと手を結ぶ。ではイスラエルのネタニヤフ首相はロシアとの関係をどうするつもりなのか。風雲急を告げる中東情勢について解説する。(全2話中第2話)
時間:12分15秒
収録日:2019年2月20日
追加日:2019年5月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●ISとアメリカの秘密交渉が行われた?


 皆さん、こんにちは。前回はISの最終局面についてお話ししました。このISがアル・バクマル地方のバーグーズ地域から逃げ伸びることができている、あるいは一部が逃げ出してしまったことについて、「なぜ逃げ出すことができたのか」という秘密が残ります。これはなかなかに意義深いことで、私の見るところ、直接ではないにしても、アメリカはISの一部がこのように逃亡することに関して、俗にいう「見て見ぬふり」をする、あるいは窮鼠猫を噛むというような事態を避けて、最終的に、ある種の留保をつけたのではないか。つまり、言い換えると、秘密交渉が双方の間に行われたのではないかということで、そうした疑念を持つ者もいます。

 私の見るところ、2019年1月から2月の最初の週頃まで、ユーフラテス東岸のバーグーズに追い込められたISが、少なくともアメリカの意思を代した形での誰か(おそらくこれはクルド人の一部だといわれていますが)と、Unspecified area、すなわち名前が特定されない地域、具体的に名前を挙げない地域、いってしまえば非常に曖昧だけれども「どこかの地域」に撤退するということで、相互に折り合いがついたということです。

 そこで、アルタナフというシリアの南東部の砂漠地域に撤収したのではないか、あるいはイラク西部のアンバルの方に向けて撤退したのではないか、そういう余地を残したのではないか、ということなのです。ここが、前回お話ししたように、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がアメリカに対して批判的になっている所以です。

 なぜそんなことをしたのか、あるいはしたという風聞が立つかというと、アメリカはISの力に徹底的に対峙するのではなく、むしろそれをアサド政権に対する牽制要因、あるいはロシアに対する牽制要因として、ISの力を少し残しておくことは決して不得策ではないと考えたのではないかという解釈が、一部の意地悪いコメンテーターから出ているわけです。


●アメリカ・イスラエル同盟 VS イランという対立構造


 ドナルド・トランプ大統領の関心は、これまではバッシャール・アル・アサド大統領の排除よりもISの解体にあったわけですが、ご案内のように、ジョン・ボルトン安全保障担当大統領補佐官は、一貫してISよりもイランの脅威を強調してきました。このISの最終局面にいたって、イランが最終的な脅威である...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治