シリア情勢を読む~トルコの思惑とクルド「苦渋の選択」~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「クルドの悲劇」を招くシリア情勢の隠れたファクターとは
シリア情勢を読む~トルコの思惑とクルド「苦渋の選択」~
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
シリアからのIS掃討における一番の功労者は同地域におけるクルド人勢力だ。しかし、アメリカがIS排除という目的は達せられたと見てシリアからの撤退を決めると、トルコがクルド人勢力の拡大を警戒して即座にシリアへの軍事介入を開始した。丸腰でトルコ軍に立ち向かわざるを得なくなったクルド人勢力が取った「苦渋の選択」とはどんなものか。アメリカ、トルコの思惑を背景とするシリア情勢を解説する。
時間:10分49秒
収録日:2019年11月12日
追加日:2020年1月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカが退けばトルコが介入


 皆さん、こんにちは。

 「一難去ってまた一難」という言葉がありますが、中東、特にシリアにおけるクルド人の立場というのは、まさにこの「一難去ってまた一難」という言葉がふさわしいかと思います。ご案内の通り、シリアにおいてはまとまった組織的な武装集団としてのISというのは、その支配した地域をほぼ失ったかに見えます。

 これに一番功労のあったのは、アメリカが地上軍を投入できない代わりにその役割を果たしたシリアのクルド人勢力でした。これはYPG(クルド人民防衛隊)、あるいはPYD(クルド民主統一党)と呼ばれる組織ですが、このシリアのクルド人組織は大きな役割を果たしたにもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領のある意味ではas usualというか、いつものようにと言うべきかもしれませんが、アメリカの次の大統領選挙等々に向けて、シリアからのアメリカ軍の撤兵、あるいはアメリカのプレゼンツの最小化のために、この最大の功労者であるクルド人を結局は切り捨てるような決断をしました。

 と申しますのは、アメリカが撤退する、その瞬間にまさに間一髪、間髪を入れず(まさに間を置かずというべきでしょうか)、トルコのエルドアン大統領はシリアへの介入、軍事干渉を発表しました。これはまことに現金なもので、はっきりしているものです。つまり、アメリカがいるからトルコはある意味でアメリカとぶつかりかねないクルドへの干渉はしなかった。しかし、アメリカがいなくなる、あるいはそのプレゼンツが薄くなると、それはトルコがクルド人相手なら、それは自由にクルドを相手に処理できる。そういうことを現実的な判断からしたわけです。


●「テロとの戦い」を理由に軍事介入するトルコ


 そもそもトルコからすると、国内のクルド人勢力が独立国家や高いレベルでの分離ということを成し遂げるのを、大変警戒しています。これと結びついているか、あるいはそれらの援助を受けているシリアのYPGやPYDが、地図をご覧いただきますがこのような形で、ユーフラテスの東側にずっと占領地を拡大した。これはアメリカの力、援助にもよるのですが、このような広範囲にわたってクルドの地域が成立するということはトルコの安全保障やトルコの国内統合にとって大変な脅威になるため、だから介入する、というのが、簡単にいえ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)下請けから世界の中心へ
インドが世界有数のIT産業の拠点へと発展した理由
島田晴雄
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(5)1人の力で歴史を変えた男たち
大義にもとづく「個人の決断と行動」が歴史を動かす…名将の教訓
門田隆将
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
資本主義の再定義…哲学で考える(4)共感としての見えざる手
利とは、義の和である…なぜ道徳的なふるまいが企業活動に重要か
中島隆博
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(1)軍人の本義を貫いた根本博中将
ソ連軍から在留日本人4万人を守れ…内蒙古での「戦後」の激闘
門田隆将
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫