トランプ政権の中東政策
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オバマの「逆張り」をするトランプ政権の真意
トランプ政権の中東政策(3)中東の未来地図の不在
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2018年初夏、中東情勢は「複合危機」の様相をますますあらわにしている。トランプ大統領によるJCPOA(共同包括的行動計画)離脱宣言があったのが5月8日。その後、14日には在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移転するという動きもあった。われわれは何に注目すればいいのか。歴史学者の山内昌之氏に要点を伺う。(全5話中第3話)
時間:9分51秒
収録日:2018年6月21日
追加日:2018年7月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●オバマの「逆張り」をするトランプ政権の真意は?


 先週に引き続き、ドナルド・トランプ米大統領の中東政策についてお話ししたいと思います。最初に、先日も申し上げたように、トランプ大統領が中東をどのような方向に持っていこうとしているのかという根本的な疑問があります。

 彼の行動には、はっきりとした傾向があります。それは、全ての行動がバラク・オバマ前大統領の政策のリヴァーサル(逆、あべこべ)を示すことで、いわば前政権の「逆張り」をしているということかもしれません。

 イラン核合意脱退は、オバマ大統領やアンゲラ・メルケル首相をはじめとするヨーロッパの首脳たちの目指してきた中東の緊張緩和への努力を否定するものでした。

 また、イスラエルとパレスチナ両陣営への抑制は、オバマの遺産ともいうべきものでした。放置しておくと強硬な政策に走りかねないイスラエルに対して歯止めをかける。逆にパレスチナに関しては、イスラエルに対する攻撃(特にハマスによるもの)を抑制すべく、パレスチナ自治政府首班マフムード・アッバース氏に向けて要請し、圧力をかけていく。これらがアメリカの基本的なスタンスとなっていましたが、現在ではそうした抑制はなくなってしまったということです。


●トランプ大統領の頭にあるのは「再選」だけ?


 オバマ大統領のスタンスからは、良きにつけ悪しきにつけ、中東で武力衝突が起きる可能性を、できる限りゼロに近づけたいという意思を見て取ることができました。しかし、現在のベンヤミン・ネタニヤフ首相と100パーセント(あるいは1000パーセントとも言っています)合意しているトランプ大統領の姿勢からは、そうしたことがうかがえません。

 アメリカとイスラエルの関係は、短期的には確かによくなりますが、イスラエルの立場に100パーセント以上コミットすることは、別の危険をもたらします。すなわちイスラエルにおいては国内における和平を推進しようとするユダヤ人の良識ある人々、パレスチナ人の中ではイスラエルとの共存を図ろうとする良識ある穏健派、これらの人々を苦しい立場に追い込むことになり、かつ中東の緊張を永続化することにつながり兼ねないということです。

 したがって、トランプ大統領は中東の未来地図を十分に描くことがないまま、このような一方的なスタンスやコミットメントをしていることが危惧されるわけで...

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