●トランプ勝利を極右による扇動政治の台頭として警戒する欧州だが
皆さん、こんにちは。今日は、新しくアメリカ大統領に確定したドナルド・トランプ氏の外交と、さらにその外交手法をめぐって世界にどのような影響があるのか、それによって日本がどのような影響を受けるのか、こうした点について、中東情勢も交えながら語ってみたいと思います。
トランプ氏のアメリカ大統領選挙における勝利は、ちょうど来年(2017年)の5月頃に予定されているフランスの大統領選挙にも大きな影を落としています。フランスをはじめ欧州において、トランプ氏は極右ではないか、そしてトランプ氏の勝利を極右による扇動政治(デマゴギー、demagogy)の台頭として警戒されている、というのです。
イタリアなど他の国々においても、トランプ氏のような、彼らいわく極右の大統領が誕生したのは、アメリカの際限のない超自由主義の産物である、という観測がされています。フランスの左派系新聞である『リベラシオン』は、「トランプ黙示録」なる表現を使っています。こうしたトランプ黙示録が欧州にも広まるのではないかという恐れが、今、EU域内において広まっているのです。そういう意味では、確かにフランスのフランソワ・オランド大統領のいう「不確実性の時代」が始まったと言えるのかもしれません。
しかしながら、トランプ氏の運動は、極右のイデオロギーというよりはせいぜいポピュリズム(大衆迎合)というもので、冷戦初期のアメリカにあったような、そして、以前紹介したかもしれませんが、アメリカのマッカーシー旋風のような極右じみたイデオロギーを伴うわけではありません。
●多党制のフランスではトランプ現象が起こらない
そもそも二大政党制のアメリカ政治と多政党制政治のフランスでは、大統領選挙の在り方も違っています。フランスにおいては多党制が敷かれているために、第一回の大統領選挙の投票で(国民戦線の)マリーヌ・ル・ペン氏が優位に立ち仮に一位になったとしても、二次投票に進んだときにトランプ現象が起こるかというと、そういうわけにはいきません。
と申しますのは、フランスには強固な中道左派あるいは中道右派、こうしたグループだけではなく、右派と左派にそれぞれ強固な基盤を持つ政党が存在するからです。もしル・ペン氏が第二投票に進んだ場合、最終投票ではいわゆる反「極右」で...