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トランプ効果で円安株高の日本に対し新興国の反応は正反対

2017年トランプ新政権を考える(1)二つの顔と日本経済

伊藤元重
東京大学名誉教授
概要・テキスト
「アメリカ第一主義」をはじめ数々の発言で世界を騒がせたトランプ大統領の当選は、就任前から想定外の動きをいろいろとつくり出している。差し当たって「円安株高」は日本のマーケットにはうれしい動きだが、この先はどうなるのだろう。東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授・伊藤元重氏に、現段階での予想をうかがった。(全2話中第1話)
時間:19:14
収録日:2016/11/30
追加日:2016/12/18
≪全文≫

●トランプ大統領には二つの顔がある


 ドナルド・トランプ大統領の就任決定を受けて、日々いろいろな報道が起き、関心を持っている方も多いことと思います。そこで今日は、トランプ政権になると、日本経済にはどういう影響が及ぶのかということを考えてみたいと思います。

 とはいえトランプ氏が実際に大統領に就任して、新政権が始動するのは1月後半。その時点でもまだ、トランプ政権がどういう政策を取るかは不確定要因が多いため、今の段階でそれを予想するのは難しい作業です。そこで、現段階で言えることから、いくつか材料を拾ってみたいと思います。

 まず、日本経済にとって最も注目すべきなのは、トランプ氏の大統領就任が決定してから大幅の円安と株高が進んだことです。選挙直後には逆の円高と株安が進みましたが、これは一日で修正され、基本的にはその後、円安株高が進んでいます。これをどう見るのかということが、いろいろと議論されているわけですが、大方の見方は、「トランプ氏には、大きく分けて二つの顔があるだろう」ということです。


●選挙戦で見せた「ポピュリストの顔」


 一つは、選挙戦の最中に見せた顔です。いわば既存の政治勢力や秩序に対して反旗を翻す形で、今の政治に不安を持っている人たちの票を集める結果になりました。一部のマスコミは、これに対して「ポピュリストの顔」と悪口を言うこともあります。

 こういう面を強調した言動は多くあります。例えば、メキシコに金を出させて、メキシコとの国境に壁を設ける。中国からの輸入品には50パーセント以上の関税をかける。テロリストを出している国の移民は認めない。日本には防衛費の負担をさらに求める。応じないのであれば日本は自分で自分を守ればいいとして、極論としては日本に核武装させてもいいといったことまで言う。

 こういうものが並んでくると、「トランプ政権は大丈夫か」という不安が募ります。トランプ政権の選出という誰も予想しなかったことに対して、最初の日に大きく円高・株安に動いた背景には、一斉にリスクオフの流れができた、つまり株価は国債に逃げ、通貨は新興国通貨から円のような新通貨軸に移るといった動きが起こったということです。


●大統領就任に向ける「共和党の顔」


 しかし、冷静になって考えてみると、選挙戦を戦った大統領候補としての言説と、その人が大統領になった後の...
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