Post-Truth Politics―トランプの政治とメディアの敗北
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「post-truth」はトランプ現象で2016年最も注目された言葉
Post-Truth Politics―トランプの政治とメディアの敗北
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏が、“Post-Truth Politics”に注目。裏付けのない言説(post-truth)がネットを通じて独り歩きしてしまう現代は、メディアそして民主主義の敗北の様相を呈している。アメリカ大統領選、イギリスのEU離脱に関する国民投票を教訓に、今後 “post-truth”社会にどう向かうべきかを論じる。
時間:13分20秒
収録日:2016年12月15日
追加日:2017年1月11日
≪全文≫

●“Post-Truth Politics”とトランプのポピュリズム


 今回は、“Post-Truth Politics”というお話をします。“post-truth”とは何か。これまた訳語が難しいのですが、とりあえず私は「事実無視の政治」と訳します。そして、この“post-truth”は、2016年のOxford Dictionariesが「今年度、最も注目された言葉」と発表した言葉です。日本でいう「流行語大賞」のようなものですが、流行語大賞よりもはるかに世界の変動を言い表している言葉だと思います。

 この“post-truth”の“truth”ですが、ここに「真理」あるいは「真理後の世界」という言葉を使っていいのかどうか、ということには若干、疑問があります。これをいきなり「嘘っぱち」「でたらめ」と訳してもいいのですが、例えばドナルド・トランプ氏の場合、意図して嘘をついたかどうかは定かではありません。ただ、事実を裏取りをせずにそのまま言い放してしまう、出任せ、思いつきを言ってしまうということでいえば、確かにその通りです。

 これまでの大統領候補は、政策においてもう少し根拠を示してきましたし、また、事実の確認は丁寧に行っていました。それをトランプ氏の場合には、思いついたままにしゃべったり、発表したりしてしまう、あるいは意図的に誇張してしまう。そうすることによって、逆に人の関心を呼び、支持を高める。こういうことがあったわけです。

 ですから、“post-truth”とポピュリズムは、密接に結び付くのです。ポピュリズムを「大衆迎合」と訳すメディアがありますが、迎合するかどうかは別のことです。つまり、「大衆に迎合していないような発言はポピュリズムではない」といわれますが、そうではなく、大衆を煽る、大衆を扇動する、これがポピュリズムでしょう。


●格差よりも移民問題の不満の方が大きいという事実


 そうしてみると、今後起こるであろう、あるいは現に起こっているという問題や、グローバリズムの問題を考えるとき、 “post-truth”とは何なのか、あるいは格差という問題があります。つまり、グローバリズムで格差という問題が大統領選挙の時に効果的だったのか、ということです。実は、「格差」と「移民」を比べると、「移民」の方に反応する人が多かったという事実があるのです。

 多くの論者はこう分析しています。グローバル化によって貧富の格差が広がって、そこに対立が起こった。だから、相対的に貧困層、あるい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(7)領国経営と秀長の統治能力
想像以上に有能――領民に慕われた秀長のリーダーシップ
黒田基樹
「進化」への誤解…本当は何か?(5)ダーウィンの生物紀行
ダーウィン「進化論」執筆の背景…娘の死と信仰との決別
長谷川眞理子
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(4)人生の勝敗を考える
幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
為末大
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏