●トランプ大統領決定後、米国金利、ドル、株価上昇へ
先日、アメリカの新しい大統領がドナルド・トランプ氏に決まったところですが、その後、米国の金利が急上昇しまして、同時にドル高、米国株高、日本からいいますと円安、日経平均の上昇が起こっています。今日はその中でも、米国の金利の動向に焦点を当て、いくつかの側面から考えてみたいと思います。
そう申しますのも、トランプ大統領決定までは、金利がしばらく下降トレンドをたどっており、それに対応して長期停滞論のような話も非常に盛んであったからです。そのような中、ここにきて急に長期金利が上昇したという点をどう見たらいいのかということは、皆さん関心のあるテーマかと思いますので、一緒に考えてみましょう。
まず、直近一カ月前後の米国長期金利10年債の動きですが、表をご覧いただきますと、このあたり(2016年6月後半から9月末あたりまで)の低いところをはっていたのですが、トランプ大統領決定の瞬間あたりから急上昇しまして、1.8ほどだったものが足元では2.4あたりまでに上昇してきているという動きになっています。繰り返しとなりますが、これに伴ってドル高、米国の株高も発生しています。
●直近の実質金利、期待インフレ率から金利上昇を分析
金利上昇をもう少し詳しく分析してみるために確認しておきますと、ご覧いただいたのは通常「名目金利」と呼ばれるものです。普通、エコノミストや学者はこれを実質金利と期待インフレ率に分解して考えます。名目金利の上下はインフレに対する予想が上下する部分と残りの実質金利と呼ぶ部分、この2つからなっていると考えます。つまり、実体経済に影響を与えるのはこの実質金利の部分と考えるのが普通です。ただ、難しいのは、期待インフレ率がなかなか直接観察できないため、したがって実質金利も本当は直接には分からないということです。そうはいっても、債券市場にインフレ期待を現すような商品がありますので、それを頼りに債券投資家が見た期待インフレ率をグラフにしてあり、名目金利からそれを引き算して実質金利を計算することができます。
そういう中で、物価連動債に現われた期待インフレ率を、引き続き米国の10年債について調べてみると、同じ期間については赤い線のような動きとなります。つまり、期待インフレ率はここ数週間、少しずつ上昇してきているということが分...