アメリカの孤立主義とトランプの保護主義政策
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トランプの孤立主義はモンロー主義と違うのか?
アメリカの孤立主義とトランプの保護主義政策
政治と経済
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏が、従来のアメリカの孤立主義およびトランプ氏の保護主義政策について解説する。トランプ氏は一国主義的方針から、TPPに反対し、また安全保障条約における米軍駐留費用負担等をやり玉に挙げている。しかし、この問題を正しく論じるには、まず比較優位の原則、国際公共財の概念理解が必要なのだ。
時間:14分10秒
収録日:2016年12月15日
追加日:2017年1月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●モンロー主義から続くアメリカの一国主義


 アメリカの孤立主義というお話をいたします。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についてはもともとアメリカが音頭をとって進めていたのに、今回ドナルド・トランプ氏が大統領になって、「TPPに参加しない」と言っているわけです。これをアメリカの孤立主義として、過去の例を思い出した人も多いと思います。その例とは、ウッドロウ・ウィルソン大統領が唱えた国際連盟にアメリカが参加しなかったことです。それは上院が賛成しなかったからということなのですが、アメリカはもともと孤立主義、あるいはモンロー主義ともいわれますが、その傾向が強いのではないか、そして今でもその傾向があるのではないかという疑問があるのです。そのあたりをもう少し解き明かしてみようというのが、今日のお話です。

 モンロー主義は、対ヨーロッパとの関係で南北アメリカ大陸の権益を確保しようとしたということで、その当時、アメリカ合衆国の一国主義、あるいはアメリカ合衆国の単独行動主義と思われていたのです。このようにモンロー主義は、本をただせば対ヨーロッパとの関係だったわけです。しかし、日本、あるいは世界の人たちの記憶にあるのは、第二次世界大戦の時のことです。ヨーロッパ戦線がかなり火を吹き、ドイツがイギリスや他のヨーロッパに進出している時期に、特にウィンストン・チャーチル首相はアメリカの参戦を希望するわけですが、これに対してアメリカはなかなか決断しませんでした。そういう意味では、アメリカの参戦は真珠湾攻撃まで待たなければならなかったという歴史があります。


●トランプ流孤立主義を2つの角度から考える


 そうしてみると、アメリカが今後、孤立主義にいくのではないかという疑問があるわけですが、ここでトランプ氏の言っていることを大きく2つの角度から見てみようと思います。

 一つは、アメリカは世界の警察官から手を引いて国内的な、またはもっと狭い範囲の安全保障を考えるのかという、安全保障上の観点です。もう一つは、国際貿易という観点です。つまり、トランプ氏はTPPのような国際的な貿易枠組みに対して、保護主義的な立場を取っています。“Make America Great Again”(アメリカの力をもう一度取り戻す)という言い方をしているのですが、それは何なのかということを少し解明したいと思います。

 トランプ氏が盛んに言っ...

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