アメリカの孤立主義とトランプの保護主義政策
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプの孤立主義はモンロー主義と違うのか?
アメリカの孤立主義とトランプの保護主義政策
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏が、従来のアメリカの孤立主義およびトランプ氏の保護主義政策について解説する。トランプ氏は一国主義的方針から、TPPに反対し、また安全保障条約における米軍駐留費用負担等をやり玉に挙げている。しかし、この問題を正しく論じるには、まず比較優位の原則、国際公共財の概念理解が必要なのだ。
時間:14分10秒
収録日:2016年12月15日
追加日:2017年1月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●モンロー主義から続くアメリカの一国主義


 アメリカの孤立主義というお話をいたします。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についてはもともとアメリカが音頭をとって進めていたのに、今回ドナルド・トランプ氏が大統領になって、「TPPに参加しない」と言っているわけです。これをアメリカの孤立主義として、過去の例を思い出した人も多いと思います。その例とは、ウッドロウ・ウィルソン大統領が唱えた国際連盟にアメリカが参加しなかったことです。それは上院が賛成しなかったからということなのですが、アメリカはもともと孤立主義、あるいはモンロー主義ともいわれますが、その傾向が強いのではないか、そして今でもその傾向があるのではないかという疑問があるのです。そのあたりをもう少し解き明かしてみようというのが、今日のお話です。

 モンロー主義は、対ヨーロッパとの関係で南北アメリカ大陸の権益を確保しようとしたということで、その当時、アメリカ合衆国の一国主義、あるいはアメリカ合衆国の単独行動主義と思われていたのです。このようにモンロー主義は、本をただせば対ヨーロッパとの関係だったわけです。しかし、日本、あるいは世界の人たちの記憶にあるのは、第二次世界大戦の時のことです。ヨーロッパ戦線がかなり火を吹き、ドイツがイギリスや他のヨーロッパに進出している時期に、特にウィンストン・チャーチル首相はアメリカの参戦を希望するわけですが、これに対してアメリカはなかなか決断しませんでした。そういう意味では、アメリカの参戦は真珠湾攻撃まで待たなければならなかったという歴史があります。


●トランプ流孤立主義を2つの角度から考える


 そうしてみると、アメリカが今後、孤立主義にいくのではないかという疑問があるわけですが、ここでトランプ氏の言っていることを大きく2つの角度から見てみようと思います。

 一つは、アメリカは世界の警察官から手を引いて国内的な、またはもっと狭い範囲の安全保障を考えるのかという、安全保障上の観点です。もう一つは、国際貿易という観点です。つまり、トランプ氏はTPPのような国際的な貿易枠組みに対して、保護主義的な立場を取っています。“Make America Great Again”(アメリカの力をもう一度取り戻す)という言い方をしているのですが、それは何なのかということを少し解明したいと思います。

 トランプ氏が盛んに言っ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(7)領国経営と秀長の統治能力
想像以上に有能――領民に慕われた秀長のリーダーシップ
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
「進化」への誤解…本当は何か?(4)ダーウィンの進化論と自然淘汰の理論
『種の起源』…ダーウィンとウォレスの自然淘汰の理論
長谷川眞理子
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歌舞伎はスゴイ(2)市川團十郎の何がスゴイか(後編)
歌舞伎十八番を定めた七代目市川團十郎、一番モテた八代目
堀口茉純
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(4)人生の勝敗を考える
幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
為末大
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文