トランプ政権と保護主義
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トランプ政権の保護主義は世界の通商システムを変えるか?
トランプ政権と保護主義(1)アメリカ通商政策の変遷
伊藤元重(東京大学名誉教授)
東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授・伊藤元重氏によれば、歴史的に見てアメリカは常に世界の通商システムの流れを変える、その先鞭をつけてきたという。よって今後の通商システムの方向を考える上で、トランプ政権下で進められる政策は大きな転換点になる可能性があるのだ。今回は、世界の通商システムの流れと変化について解説する。(全2話中第1話)
時間:13分10秒
収録日:2017年1月26日
追加日:2017年2月14日
≪全文≫

●世界の通商システムの流れを変えてきたアメリカ


 トランプ政権になっていろいろなことが動いているのですが、日本から見て最も注目されることの中身が、いわゆるトランプ氏の保護主義的な言動です。今回はトランプ政権の下で起こり得る保護主義について、2回に分けてお話しさせていただきたいと思います。

 今日、第一に申し上げたいのは、過去の歴史を見てもアメリカ政府が常に世界の通商システムの流れを変える、いわばその先鞭をつけてきたということ、そして15年、あるいは20年というタイムスパンの中で何度か大きな変化が起こってきたということです。

 今、そういう中にあるとすると、トランプ大統領の下で進められている政策は、単にトランプ大統領個人の特徴的な政策というだけではなく、今後の通商政策、通商システムの方向を考える上での大きな転換点になる可能性があるということを、ぜひ考えていただきたいと思います。

●保護主義を広げたスム―ト・ホーリー関税


 少し歴史をさかのぼりますが、アメリカが先鞭をつけた通商システムの大きな流れの中で最も有名な事例は、1930年代のいわゆる保護主義、つまり各国が貿易制限をして世界に不況が広がっていったというものです。実は、先進国の中で一番最初にここに踏み切ったのがアメリカで、スムート・ホーリー関税といわれるのですが、1930年代の初めにアメリカは大幅な関税の引き上げをし、結果的には平均関税率が40パーセント前後にまでなったという、非常に厳しい貿易制限をしました。アメリカは1920年代の後半から共和党政権の下で、いわゆる保護主義的な発言をする政治家がたくさんいて、スムート・ホーリー関税はそれに決着をつけた形で非常に高い関税をかけたのです。

 ご案内のように、1929年にウォール街の株の大暴落が起こり、アメリカ経済も非常に厳しい状況になったわけですが、このスムート・ホーリー関税がきっかけになって、その後イギリスやフランスなど主要国が次々に関税を引き上げていくという保護主義の広がりがあったのです。この時期は毎月くらいのペースで世界の貿易がどんどん縮小していき、これが世界大恐慌をさらに悪化させたのです。輸出ができないということで各国の産業が大きく打撃を受け、特に日本やドイツなどでは軍部の台頭、ナチスの台頭というようなことの一つの背景にもなりました。ですから、そういう意味ではアメ...

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