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トランプ大統領の就任演説は「狭い・古い・内向き」

トランプ大統領の就任演説を読み解く

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
2017年1月20日に行われたトランプ大統領の就任演説を、政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が読み解く。曽根氏は今回の就任演説を「狭い・古い・内向き」と評する。どのような点がそうであったのか。それは、トランプ大統領のいかなる問題点を示すものなのか。アメリカ社会の根本的問題にも言及し、アメリカが抱える課題を追究する。
≪全文≫

●「狭い・古い・内向き」だった就任演説


 ドナルド・トランプ大統領が就任いたしました。この就任演説に関しては、さまざまなところで解説がされていますので、改めてということになりますけれども、どう読み解いたらいいのかというお話をします。

 一言でいってしまいますと、「狭い・古い・内向き」という印象です。つまり、これで分断、あるいは不支持の多さがあるということを、どう乗り越えていくことができるのか、ということです。内容的には分かりやすい英語で語られていて、そういう意味では万人向けといえます。あるいは、大統領選挙のキャンペーン中に言ってきたこととほとんど同じようなレトリックが使われている、ということです。


●平板さと否定のレトリックが示す「狭さ」


 しかしながら、「狭い」という意味ですが、一つは、理念的、もしくは歴史的、国際的に見て、格調の高い議論をしたのかというと、議論の広がりや表現という点において若干、平板だったということです。もう一つは、否定のレトリックがかなり使われているということです。キャンペーン中のようなエンターテイメント的なことをまた言ってくれるのではないか、そのつもりだろうと思っていた人もいたでしょうが、それほど面白い話がたくさん出てきたわけではなく、従来の繰り返しであったと思います。


●1980年代的「アメリカ第一主義」で発想の古さが露呈


 また、その発想はかなり古い表現、古い内容のもので、1980年代のことが多いのです。それは「アメリカ第一主義」に関連しており、具体的にはどういうことかというと、“Buy Americans”、あるいは“Hire Americans”、つまり「アメリカの製品を買え」「アメリカ人を雇え」ということです。

 ただ、これは製造業中心の80年に当てはまることで、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどで稼いでいるアメリカの現状とは実態が大きく違います。また、現実のアメリカの雇用状況は、アメリカ的にいえばですが完全雇用に近く、現実の認識がかなり異なっているわけです。それに対して、「口先介入」「指先介入」という言い方がされていますが、例えば、フォードのメキシコへの工場進出を止めさせて700人の雇用を確保するというようなことを言い出します。これは焼石に水というか、政策ではありません。

 日本でもよく、地方の駅前商店街がシャッター通りになっていま...
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