●ユーラシア国家ロシアによる政治的変動が進行している
皆さん、こんにちは。まず、次のような3つの組み合わせをお聞きになって、皆さんはどのようにお考えになられるでしょうか。何を連想されるでしょうか。
ブレグジット(BREXIT)、つまりいわゆる6月23日の英国EU脱退を決定付けた国民投票。次に、サンクトペテルブルク会談。これはウラジーミル・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領による8月9日の会談です。そして、9月2日のウラジオストク会談。安倍晋三総理とプーチン大統領が、最も直近に行った会合です。こうしたことの延長に、12月15日に予定されている山口県におけるプーチン・安倍両首脳の会談を、連想することも可能かと思います。
これらは一見、バラバラのように見えますが、いずれもユーラシアの一番西の島と一番東の島が関わっている大きな政治変動を意味していることになります。つまり、ユーラシア大陸の西から東に至るユーラシア国家としてのロシアが、なんらかの形で介在した大きな変動が今、着実に進行していることを、私たちは理解するという視点を持つべきかと思います。
●3つの観点で地政学的に読み解くプーチンの戦略構想
ロシアはユーラシアパワーとして外交、あるいは政治戦略というものを常につくりあげてきましたが、ロシアがユーラシアの西におけるウクライナ問題に取り組む姿勢と、ユーラシアの東においては北方四島の問題に絡んで対日関係を調整しようとする姿勢は、各国の政治家には通常、別個の問題として考えられてきました。また、各国の外交官たちも普通、これらを一つのまとまった戦略的構図の中で位置付けるということはあまりしません。ところが、政治家であるプーチン大統領はしばしば常套手段として、これらのユーラシア各地において生じている政治現象を、ロシアの利益を発展させるために他の地域における影響力をてこにしながら利用してきました。
例えば、次の3つで1つの構図を描ける方は、プーチンの戦略構想というものについて、相当詳しい方かと思います。1つはカスピ海。2つ目はイラン。3番目はNATOとの国境において8月15日の週に行われた軍事演習。こうしたことがどのように結び付いているのか、ということを読み解くのが、通常の国際政治学や歴史学とは異なり、政治学と歴史学を援用しながら戦略的に考える地政学につなが...