安倍総理のイラン訪問を読む
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「第4次湾岸戦争」は起こるのか?
安倍総理のイラン訪問を読む(1)三つの湾岸戦争と現在
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トランプ大統領が2018年5月に、米英独仏中露とイランで2015年に締結したJCPOA(イランの核問題に関する最終合意<包括的共同作業計画>)を離脱すると表明して以降、イラン情勢の危機が高まったが、その背景は何か。1980年のイラン・イラク戦争を「第1次湾岸戦争」だとすれば、1991年の湾岸戦争は「第2次湾岸戦争」、2003年のイラク戦争は「第3次湾岸戦争」ということになる。はたして「第4次湾岸戦争」は勃発するのか。安倍総理がイランを訪問した意味、そして現在の中東情勢を読み抜く。(全3話中第1話)
時間:11分28秒
収録日:2019年6月10日
追加日:2019年7月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●これまで3回繰り返されてきた「湾岸戦争」


 皆さん、こんにちは、今日は20世紀と21世紀の湾岸戦争というタイトルでお話ししてみたいと思います。

 なぜ、安倍総理はこのタイミングでイランにでかけたのか。なぜ、日本は中東において積極的な、いわば外国から「調停」と呼ばれている役割を果たすことになったのか。そして何よりも、歴代大統領と国務長官はすこぶる日本のイラン政策に対して冷淡であり、批判的であったにもかかわらず、トランプ大統領は、今回はそれを認めたのか。むしろ依頼したのか。

 こうした問題について、多くの謎が残っております。

 簡単にいえば、日本は20世紀と21世紀のいわゆる湾岸戦争の試練を越えて、一貫して、イランに対しても、ほかの中東関係国に対しても、基本的に友好を維持してきた、世界においても稀有(けう)の国家であるというのが、その理由の一つかと思われます。

 これまで中東においては、比喩的に申しますと、3回の湾岸戦争が繰り返されてきました。

 「第1次湾岸戦争」は、1980年から1988年に至るまで、いわゆる「イラン・イラク戦争」と呼ばれるものでありました。これは歴史上、初めて長距離ミサイルが戦場で使われた戦争として、中東だけではなく、世界史においても稀有の衝突でした。かつ、イラクはこの際、イランの兵員に対して、初めて化学兵器を使用したという歴史的な事実があります。

 この「イラン・イラク戦争」は、それが8年ほどにも及ぶことによって、周囲の困惑を増大し、かつ、日本のような両国に対して友好的な国々の、いわば焦燥感・イライラ感を募らせました。そこで「イラン・イラク戦争」を略して「イライラ戦争」という名称で呼ばれていたことは、ご案内かと思います。

 しかし、これは大きな歴史のパースペクティブにおいて位置づけるならば、その後に続くことになる湾岸の二つの戦争の戦訓であったといえるかと思います。

 私たちが普通呼んでいる「湾岸戦争」は1991年の戦争です。これは「第2次湾岸戦争」と歴史的には位置づけて然るべきかと思われます。すなわち、巡航ミサイル、パーシングミサイルが使われ、対するにスカッドの改良型ミサイルがイラクによって使われるという事態になりました。

 特に、のちの「イラク戦争」(2003年)と比べた場合に、1991年の「湾岸戦争」が異なるのは、イラク経済政策など国連安保理...

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