●タイでは大学卒業後、すぐに起業する人が増えている
質問 各国が若い人たちのビジネスの障害を、いかに取り除くのかが重要だということですね。
白石 私も2017年になってそれを痛感するようになりました。6月にタイの泰日工業大学に行く機会がありました。それは、日本に留学してタイで成功した人たちがつくった大学なのですが、もともとは卒業生が日系企業に就職するということが売りでした。しかし今では、もうあまりそれを気にかけていないようなのです。むしろ卒業後すぐに自分で会社をつくって、ビジネスを立ち上げたいという人が多くなっています。本当に21、22歳の人たちがやり始めているのです。
ただし、「日本がまだ何か手助けできることはないか。提案して欲しい」ということで、私が呼ばれたのです。よく考えてみると、今までの例えばJICAの協力は、プロジェクター向けがほとんどでした。プロジェクトとなると、専門家を派遣してきたわけです。しかしすでにこの大学では、今までの技術協力のやり方では対応できない状況がありました。人がたくさんいるために、一人の専門家を派遣しただけでは対応できず、むしろ何人かネットワークのハブになるような人と連絡を取ることが重要でした。彼らの持っているネットワークで、たくさんの人がうまくつながっていけるのです。
日本に帰国後、知り合いの日本人の経営者と食事をしていると、面白い話を聞きました。その方は日本で農産物のB to B、つまり生産者とレストランを直接つないでいるのですが、日本ではこのシステムを立ち上げるのに3年かかったところ、フィリピンでは半年でできたというのです。それは要するに年齢の違いです。つまり、日本の農業者は皆、高齢化しているのですが、フィリピン人は若く、スマートフォンなどICTを使いこなしています。だから半年で全部出来上がったというのです。これはもしかすると、とんでもないことが起こりつつあるのではないかと感じました。
恐らく足りないものは、テクノロジカルなアドバイスやファンドです。その辺りがうまくいって、政府がレギュレーションなどをうまくつくれば、東南アジアもどんどんと伸びていくでしょう。
●今後の生き方に関わる部分で、日本にはまだできることがある
質問 日本には、ビジネスでのし上がってやろうという、ぎらぎらした若い人が少ないように感じます。日本は今後ど...