「TPP」か「一帯一路」か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
中国のインフラ輸出は、政治的な時限爆弾になりかねない
第2話へ進む
中国の「一帯一路」構想は、果たして「張子の虎」なのか
「TPP」か「一帯一路」か(1)米中の思惑と日本の役割
政治と経済
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
今や太平洋は、アメリカと中国それぞれが覇権を競い合う場所となった。リバランシングというアメリカの政策転換に対し、中国は「一帯一路」という対抗的な経済圏構想を打ち出した。このアジア情勢に日本はどう関わるべきか。政策研究大学院大学(GRIPS)学長・白石隆氏が、最新の情勢分析を踏まえ、米中の思惑と日本の取るべき道を示す。(全5話中第1話)
時間:12分24秒
収録日:2016年3月9日
追加日:2016年5月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカのアジア太平洋政策の変化


 2011年、バラク・オバマ大統領はすでに「リバランシング」ということを言っていました。歴史的に10年ほど後から振り返ってみると、あそこでやはりアメリカのアジア太平洋戦略は変わったと言えるような、実は非常に大きな戦略的変化だったと私は考えています。

 その内容はもう非常にはっきりしています。まず、アメリカの持っている軍事的なアセット(資産)を、大西洋50対太平洋50から、大西洋40対太平洋60に移すということです。これは本当に、粛々と進んでいます。

 政治的に申しますと、いわゆる「ハブ&スポークス」の地域的な安全保障の仕組みはもちろんそのままですが、そういう同盟国との連携に加えて「パートナー国」という概念が出てきました。アメリカはパートナー国とも連携すると言い始めます。それがベトナムであり、インドネシアであり、シンガポールであり、インドです。さらに地域協力機構としてのASEAN(東南アジア諸国連合)とも連携する。そうした軍事的な関与の強化と政治的な連携の上に、新しい通商秩序を展開する。事実上、これがそのパイの中身なわけですね。それをやるのがTPPです。


●日本政府にも大きな意味があったTPP交渉


 先日カリフォルニアで開催された、US‐ASEANの首脳会議でのアメリカ政府のスポークスマンの発言が、なかなか面白いのです。これまでのアメリカの対アジア太平洋政策というのは、軍事的にはもちろん非常によく分かりやすいものでした。政治的にも分かりやすい。さらに通商上のルールづくりという意味でも、TPPという手段はあります。しかし、TPPは「所詮ルールに過ぎないだろう」と思っていました。そこに中身があるのか? というところに、実は非常に大きなクエスチョンマークがあったのです。

 しかし、ここに関して、ホワイトハウスのスポークスマンがはっきり言ったことは、「2000年以降の直接投資を見ると、アメリカが一番大きい」ということです。実際、そうなのです。私も含めて、日本の研究者やジャーナリストがFDI(外国直接投資)を見るとき、どうしても製造業で見てしまうのです。ところがアメリカの場合には、サービス産業の規模がものすごく大きいわけですね。そのため、サービスやマイニングなど全部入れると、アメリカの経済規模はやはりすごいのです。ですか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮