●AIIBの使い勝手はよくないかもしれない
その上で、シルクロード基金とAIIB(アジアインフラ投資銀行)について申しますと、これらの性格は非常に違います。シルクロード基金は、国有銀行の中にそういうファンドをつくり、それで中国の銀行として進める。ということは要するに、中国政府としていろいろなところに投資するわけで、非常に使い勝手の良いものです。別の言い方をすると、「よその国のことなど知ったことか」でやれます。かなり機動性も高いし、パキスタンなどを見ると、これをよく使っています。
これに対してAIIBは、非常に脚光を浴びましたが、結局中国の政府から見ると、あまり使い勝手は良くないのではないかというのが最近の印象です。AIIBでもって開発金融をやり、それで中国の企業が露骨にビジネスをやっているという例は、寡聞にして私は見ていません。
●AIIBに対する日本政府の見解
AIIBに関して、日本政府にはおそらく二つの考え方があります。私などは、少なくとも「入るよ」という意思表示をして、その上で中国とAIIBという銀行の性格について条件を詰めていき、国際的な金融機関に少しでもふさわしいものにした方がいいのではないかという立場です。その方が、例えば東南アジアやオーストラリアなどの期待にも応えることになり、「日本はやはり戦略的にものを考えた上で、AIIBに関与し、中国にも関与し、この地域のインフラ資金需要にも応えようとしている」というように見えたのではないかと思います。
私はこう考えていたのですが、官邸とおそらく財務省は、そうは考えていないようです。AIIBは、所詮金融機関であるから資金を調達しなければならないが、国際的なクレジットの評価から言って、JICA(国際協力機構)やワールドバンク(世界銀行)と同じぐらいのクレジットが取れるわけがない。そうすると開発金融といっても、金利が高くなるので、それだったら結局、あまり良いプロジェクトにお金をつけられないのではないか。こう考えています。ある意味では、専門家として当然考えるところを非常に重視しており、今のところは様子を見ようという判断になったのかなとは思っています。
政府がそう考えるのなら、それはそれできちんとした理由のあることです。ですから私としては、そこは政治的判断の問題になります。それはそれでいい...