●米中関係は長期的視座で論じなければならない
―― 本日は中西輝政先生に、米中対立の行方とロシアのあり方についてのお話を、ぜひ伺えればと思っております。前回、先生に、2018年12月に先生にお話をしていただいた際には、「非常に長期的な読みとしては、現状を米中冷戦と呼ぶ人がいるが、本当にこれが冷戦なのか、冷戦のあり方というものをきちんと考えなければならない」「また、中国の経済的な力やインテリジェンスの力を考えると、長期化すればするほど中国が有利になるのではないか」「さらに、今後の習近平としては、まずは韓信の股くぐりのような形でいくだろうけれども、その先がどうなるか。他方、アメリカが何をめざすのか。この辺は日本としてよくよく見極めないと、大変なことになるぞ」というご提言をいただいております。その後、関税をめぐる交渉や、トランプ大統領はだいぶ強硬な手段を打ってきていて、中国の経済も厳しい数字が出始めているというなかで、さて、今後、どのような流れになっていくか、中西先生はどのようにご覧になっていますか。
中西 今、ギリギリの難しいタイミングで米中関係を論じなければなりません。2019年1月以降から半年あまりの米中関係全体の流れをざっと概観しても、やはり表面上対立の様相が厳しくなっています。2018年の時点から、中国はアメリカの要求を、知的財産権問題や政府が出している産業補助金の問題などで大幅に譲歩するなら、ということで交渉をしつつ、アメリカは中国からの輸入品に関税を10%かけ、それをさらに25%上乗せするということを巡って、ずっと議論を続けてきました。
その間に、開催が間近であるとみられてきた米中首脳会談が何度も先延ばしになり、とうとう2019年6月の大阪のG20の場まで延びてしまいました。2018年の1年間の動きを踏まえ、さらに長期的に見ると、こうした状況は、中国による対米戦略の中で「大戦略」として位置づけられるような、いわゆる「韓信の股くぐり」的な対米宥和政策とは少し違う形がみられます。つまり、中国が昨今では少し強く、表面上は徹底抗戦を思わせるような強い姿勢に出始めているように見えるのです。
ここで恐らく多くの日本人は、「ここにきて中国は絶対に譲れない話になってきたため、対米政策としては我慢できないところに来たのだろう」と考えると思います。特に産業補助金の問題は、2019年5月の米中交...