クライン『ショック・ドクトリン』の真実
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
陰謀論の典型的なパターンとは?惑わされぬための考え方
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(4)経済的自由なしに民主主義はあり得ない
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
クラインの主張の矛盾は「新自由主義」への批判において極まる。クラインによると、民主化と経済自由化は矛盾するということだが、それは根拠のない話で、実際はまったく違うのだ。今回はクラインの議論の矛盾を、データをもとに検証するとともに、今後、無根拠な論説や陰謀論に惑わされないための処方箋を示す。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分09秒
収録日:2023年7月20日
追加日:2023年9月8日
≪全文≫

●民主化と経済自由化は矛盾するというクラインの矛盾


―― クラインが、結局は新自由主義が世界をどんどんダメにしたのだという議論を展開しているということですが、柿埜先生がデータをまとめてくださっています。

柿埜 はい。

―― どういうデータになりますでしょうか。

柿埜 まず、全ての間違いをいちいち指摘するということはちょっとできないので、本当にごく一部だけを指摘することにします。

 まずそもそも、クラインは民主化と経済自由化は矛盾するかのように書いています。だから、経済自由化を進めた独裁者や非民主的な指導者ばかり挙げるのです。ところが、実際はまったく違うのです。

 これは、民主主義指数と経済的な自由の指数を比較したものです。『エコノミスト誌』による民主主義指数に基づいて国を分類したものなのですが、これを見ていただくと、現実には、民主主義の度合いが高い国の方が経済的な自由が大きいということが分かると思います。

 実際、完全な民主主義に分類される国で、経済的な自由がない国に分類される国はありません。権威主義体制に分類される国は、ほとんどが経済的な自由がない国です。ですから、それが矛盾するとか、不人気な考え方だから市場経済をやるには非民主的な方法を使わなければいけないのだというのは、はっきりいって全然根拠がないのです。

 実はクラインがいった、1970年代の後半から1980年代にかけては、世界中のどこの国でも自由化が進んだ時代です。だから、どんな国を取り上げても、経済的自由化が進められたということができるわけです。なのにわざわざ、クラインは民主的でない国だけ取り上げているわけです。

 フリードマンが一番絶賛していた国の一つはニュージーランドですが、ニュージーランドは徹底的な民営化をやった国です。それを進めたのは、左派政権だったニュージーランド労働党のロンギ首相です。(ですから)右派とか左派とか、そういうことは関係ないのです。

 それから、アメリカの経済の自由化、規制緩和を最初に始めたのは、どちらかといえばカーターです。レーガンの前にカーターが、すでに航空産業の規制緩和を始めましたし、運輸産業の規制緩和も始めました。インフレ率が高すぎるから、急激な引き締めをしなければいけないということを認識したのも、カーターが最初...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫