クライン『ショック・ドクトリン』の真実
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
フリードマンの主張と電気ショックは本当に似ているのか?
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(2)曲解された「ショック療法」
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
「ショック療法」という概念こそミルトン・フリードマンの核心であるとし、それを拷問や電気ショック療法と重ね合わせて批判を展開したナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』。しかしフリードマンは、本当にクラインのいうような意味で「ショック療法」の議論をしていたのだろうか。今回は、フリードマンの議論の真相に迫るとともに、クラインの批判がいかに的外れであるかを検証していく。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分55秒
収録日:2023年7月20日
追加日:2023年9月1日
≪全文≫

●「ショック療法」は本当にフリードマンの経済学の核心なのか


―― 一方のフリードマンも、実は自分の経済理論の中で「ショック」について言及したことはあるということなのですが、どういう文脈でフリードマンは言及したのでしょう。

柿埜 クラインは、「ショック療法」という言葉をフリードマンが使っているといいました。「これがフリードマンの経済学の核心だ」というようなことをいうのです。だから、『ショック・ドクトリン』に説得される方はあまり読まないかもしれないのですが、フリードマンの『資本主義と自由』などを一度真面目に読んでみてください。“ショック・ドクトリン”がフリードマンの経済学の中心として、そこから浮かび上がってきますか、ということです。

 フリードマンによって書かれた経済理論の本の、どれを読んでもそんなことはまったくないはずです。それは当たり前で、フリードマンは「ショック療法」などという言葉を使ったことがほとんどないからです。実際、フリードマンが「ショック療法」という言葉を使った文脈というのは非常に限られたものです。

 先ほど(前回)少し言いましたが、チリのピノチェトが独裁をした時に、フリードマンが彼にアドバイスしたということをクラインは言うわけです。現実には、フリードマンは1975年にチリに6日間滞在して、その6日間の間に45分間ピノチェトと対談しました。そして、ピノチェトにどうやったらインフレを抑えられるかということについて覚書を渡します。これが全てです。

 45分間、政治家と話したことがあるといって、それが黒幕でその顧問だとかいう話になるのですが、顧問だったことは一度もありません。

 フリードマンは、チリの大学から名誉学位を授与されるという話なども全部断っています。「私は独裁者を支持しない」というのがその理由です。独裁者から金を受け取らないと言って、フリードマンはすぐ断っていますし、しかもチリに滞在したときにチリの大学で講演しているのですが、その講演でチリの人々に、「自由を奪われて今、恐ろしい体制の下にあります」というようにはっきり言っています。相当勇気のある発言をしているのです。対外的にもそのように人権侵害を糾弾しています。

 クラインは非常にあっさりとそれを、「言い訳のようなものだ」とごまかすのですが、フリードマンは絶対に、ピノチェトの独裁体制を肯定など...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…秀吉に怒られなかったのは秀長と家康だけ
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
日本の特性とは何か~「日本的」の本質(5)鋭い感性と深い精神性
本居宣長が説く「神信仰」…神道の本当の姿に迫る
田口佳史
平和の追求~哲学者たちの構想(2)世界市民と国家連合
「コスモポリタニズム」の理想と「国家連合」というプラン
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治