本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
結局、主流派と異端派の何が違うか…経済学史の大きな示唆
本当によくわかる経済学史(16)現代の経済学のコンセンサス
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
1970年後にスタグフレーションに陥ったことにより、ケインズ的な政策よりもフリードマンの金融政策が受け入れられていくことになる。柿埜氏は「実態と理論が合っているからこそ、主流派は主流たり得る」ことを強調し、異端派との違いを解説。さらに、現在の経済状況を踏まえつつ、経済学の伝統と英知を活用することをコンセンサスとして説いてシリーズを締めくくる。(全16話中16話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分09秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2023年3月22日
≪全文≫

●スタグフレーションが与えた影響


―― 少し話が戻りますが、ケインズ政策が第二次大戦後に進み、いってみれば「終わりの象徴」になったのがスタグフレーションでした。これをもう少しご説明いただくと、どういうことになるのでしょうか。

柿埜 スタグフレーションとは、「停滞(stagnation)」と「インフレーション(inflation)」を合わせた造語です。ケインズ経済学の主流だった当時のオールドケインジアンの人たちの考えでは、「物価の上昇と深刻な不況が並存するということはないだろう」と思っていたのです。ところが実際には、貨幣供給量を増やしまくった結果、急激なインフレになったけれども、景気も良くないという状況が並存する事態が起こってしまったのです。

 当時のケインズ政策を提唱した人たちは、「これは一時的だ」「物価統制をするべきだ」「企業が悪い」「労働組合が悪い」などと滅茶苦茶なことをたくさん言ったのですが、結局、全然うまくいきませんでした。

 だから、「金融政策を物価の安定に割り当て、他は自由市場に任せる」ほうがむしろ良いというフリードマンの考え方を、皆が受け入れるようになってきます。世界各国が金融引き締めを行い、スタグフレーションは実際に収まったということで、フリードマンの考え方は正しかったということがおおよそのコンセンサスになります。

 ちなみに、インフレの抑制に一番成功したのは、実は日本です。その後、デフレになってしまったことを考えると残念な話ですが、当時は大成功の例でした。

 そして、だんだんと大きな政府から小さな政府へという流れが起こるわけですが、若干、脱線といっていいものが1つあります。それが「新しい古典派(New Classical School)」です。

 これは「新古典派(Neo classical School)」と間違えやすいのですが、どういう考え方かというと、完全競争と価格伸縮的(要するに、価格も自由に設定できる)というモデルです。経済がかなり競争的な状態にあるモデルを使い、かなり自由放任主義的な主張をするグループです。

 その主な理論として、「合理的期待形成の理論」があります。これ自体はそれほど間違ってはおらず、その後のニューケインジアンも取り入れている理論です。「人々は過去の出来事を延長して考えるのではなく、いろいろな情報をきちんと合理的に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏