本当によくわかる経済学史
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大恐慌とケインズ…様々な恐慌克服の処方箋の真実を探る
本当によくわかる経済学史(9)ケインズ、計画経済、オーストリア学派
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
1929年の世界大恐慌ではFRBの金融政策の失敗が明らかにされなかったため、「古典派経済学には限界があるのではないか」と皆が考えるようになってしまった。そこで代わって台頭したのが、ケインズ経済学やマルクス主義、オーストリア学派であり、人々の関心はそちらに向くことになる。不況時に、噴出した議論とは、いかなるものだったのか。当時の状況を詳しく解説する。(全16話中9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分23秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2023年2月1日
≪全文≫

●結局、ケインズの理論とはどういうものだったか


―― それで、実際そういうことになってくると当時、まさに渦中、状況が分からない中でいろいろな議論が出てくる。そこで、かの有名なケインズが出てくるのですね。

柿埜 そうですね。

 世界恐慌がひどくなってきて、FRBはきちんとやっていると当時は信じられていましたから、それでもうまくいかないとなると、「これは新古典派を含めた古典派的な発想がそもそも間違いなのではないか。市場経済はうまくいかないのではないか」という発想が強くなってきます。その結果、ケインズ経済学が出てきますし、マルクス主義に関しても知識人や学生の間で一世を風靡するわけです。

 ケインズ理論は何が問題か。結局、彼の理論は「経済全体の景気の変動要因は投資によって決まってくる」ということを主張したものでした。「市場経済は本質的に不安定性を持っている。その不安定性を克服するためには財政金融政策、あるいはもっと介入主義的な政策をどんどんやらなければいけない」というのが当時、ケインズの特に重要だと思われた主張です。

―― 財政金融政策というと、政府がお金を出すということですね。

柿埜 そういうことです。だから、ケインズの『一般理論』の最後のほうでは、「投資の社会化」といって、投資の量などを政府が管理するという、かなり計画経済的な発想も出てきます。ケインズ自身、もともとどちらかというと貨幣数量理論が正しいと思っている人でしたが、「何かうまくいかない。もうダメなのではないか」となって、非常に介入主義的な方向に向かうわけです。


●宣伝と実態は大違い…ソ連の「プロパガンダ」を信じた人々


―― 一方で、人気のあったマルクス主義もはやってくるし、さらにオーストリア学派の主張もまた注目を浴びることになったのでしょうか。

柿埜 バブルが崩壊して景気が悪くなり、「そもそも市場経済はバブルが起こったり、景気が変動したりする非常に悪い体制だ」ということで注目を集めたのはおかしな話なのですが、その1つは「市場経済なんてやめてしまえ」というマルクス主義です。マルクス主義というより、当時のソ連はマルクス主義経済学の実験場で、これが非常にうまくいっていると本人たちは宣伝したのです。

―― プロパガ...

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