本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大恐慌とケインズ…様々な恐慌克服の処方箋の真実を探る
本当によくわかる経済学史(9)ケインズ、計画経済、オーストリア学派
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
1929年の世界大恐慌ではFRBの金融政策の失敗が明らかにされなかったため、「古典派経済学には限界があるのではないか」と皆が考えるようになってしまった。そこで代わって台頭したのが、ケインズ経済学やマルクス主義、オーストリア学派であり、人々の関心はそちらに向くことになる。不況時に、噴出した議論とは、いかなるものだったのか。当時の状況を詳しく解説する。(全16話中9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分23秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2023年2月1日
≪全文≫

●結局、ケインズの理論とはどういうものだったか


―― それで、実際そういうことになってくると当時、まさに渦中、状況が分からない中でいろいろな議論が出てくる。そこで、かの有名なケインズが出てくるのですね。

柿埜 そうですね。

 世界恐慌がひどくなってきて、FRBはきちんとやっていると当時は信じられていましたから、それでもうまくいかないとなると、「これは新古典派を含めた古典派的な発想がそもそも間違いなのではないか。市場経済はうまくいかないのではないか」という発想が強くなってきます。その結果、ケインズ経済学が出てきますし、マルクス主義に関しても知識人や学生の間で一世を風靡するわけです。

 ケインズ理論は何が問題か。結局、彼の理論は「経済全体の景気の変動要因は投資によって決まってくる」ということを主張したものでした。「市場経済は本質的に不安定性を持っている。その不安定性を克服するためには財政金融政策、あるいはもっと介入主義的な政策をどんどんやらなければいけない」というのが当時、ケインズの特に重要だと思われた主張です。

―― 財政金融政策というと、政府がお金を出すということですね。

柿埜 そういうことです。だから、ケインズの『一般理論』の最後のほうでは、「投資の社会化」といって、投資の量などを政府が管理するという、かなり計画経済的な発想も出てきます。ケインズ自身、もともとどちらかというと貨幣数量理論が正しいと思っている人でしたが、「何かうまくいかない。もうダメなのではないか」となって、非常に介入主義的な方向に向かうわけです。


●宣伝と実態は大違い…ソ連の「プロパガンダ」を信じた人々


―― 一方で、人気のあったマルクス主義もはやってくるし、さらにオーストリア学派の主張もまた注目を浴びることになったのでしょうか。

柿埜 バブルが崩壊して景気が悪くなり、「そもそも市場経済はバブルが起こったり、景気が変動したりする非常に悪い体制だ」ということで注目を集めたのはおかしな話なのですが、その1つは「市場経済なんてやめてしまえ」というマルクス主義です。マルクス主義というより、当時のソ連はマルクス主義経済学の実験場で、これが非常にうまくいっていると本人たちは宣伝したのです。

―― プロパガ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生