本当によくわかる経済学史
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
重商主義と重農主義…古典派経済学の前段階の主張とは?
本当によくわかる経済学史(2)重商主義と重農主義の真実
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
「重商主義」と「重農主義」という考え方が16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで登場した。重商主義は、それ以前にはなかった「経済に法則がある」という発想から出てきたものだが、やがてその問題点に気づいたケネーが「経済は自由放任がいい」という重農主義を提唱する。今回は、それぞれ、どのような背景から登場し、具体的にどのような内容を主張したのか。また、どのような点が至らず廃れていったのか。古典派経済学の前段階となるこれら2つの考え方を解説する。(全16話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分47秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2022年11月23日
≪全文≫

●重商主義の始まり――「経済には法則がある」という気づき


―― いよいよ深掘り講義に入っていきたいと思います。古典派経済学の話に入る前に、経済はどのように考えられていたかについて、ここではよく教科書で聞いた記憶のある「重商主義」と「重農主義」がどういうものなのかということをお聞きできればと思います。

 重商主義は16世紀から18世紀頃にかけて、重農主義が18世紀頃ということですが、これはそれぞれ、どのように理解すればいいのでしょうか。

柿埜 重商主義について、彼らは自ら重商主義と名乗ったわけではなく、アダム・スミスの後の人たちが「少し間違っているよね」ということで付けたレッテルです。ですから、統一的な考え方があるわけではないので、重商主義と呼ぶのは少し気の毒なところがあります。

 経済学が登場する前の時代、例えばプラトンやアリストテレスも経済の話はしていました。ですが、「何が正しいことで、その正しいことを皆に強制するにはどうしたらいいか」という議論をしていたのです。「経済に法則がある」という発想は、実はなかったのです。

 それが、「経済とは、もしかしたら正義や政治といったものとは別の学問なのではないか」ということを考え始めたのが、重商主義です。その点では彼らは偉かったのですが、ところがある意味では、変な考え方に入ってしまいました。現代の、普通の経済評論家がおっしゃっていることですが、それはときどき「重商主義の発想」であるということがあります。

―― どういうことですか。

柿埜 例えば、「どこかの国が繁栄していたら、他の国はその犠牲になっている」といったものです。重商主義とは基本的に、「貿易黒字をため込んで、貨幣がどんどん入ってくる。そうすると国は豊かになる。なぜかというと、お金とは富だから」という発想なのです。

―― お金の量が世界で決まっていて、例えば英国が全部取ってしまったら、他の国が貧乏になりますよ、と。

柿埜 そうです。要するに、「何らかの生産活動があり、それが経済活性化の源泉だ」という発想はあまりありません。特に初期の重商主義者はそうです。ですから、完全なゼロサムの発想をしている人がすごく多かったのです。つまり、「自分の国が豊かになるには、他の国から貿易でどんどん仕事を取らなければいけない。自分の国...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏