本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
オーストリア学派…ミーゼス、ハイエク、シュンペーター
本当によくわかる経済学史(11)オーストリア学派の真実
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
世界大恐慌の後、マルクス主義経済学の計画経済を批判したのが、オーストリア学派といわれるグループであった。彼らは、「そもそも計画経済が可能なのか」という本質部分や、その大きな弊害を鋭く突いた。また、企業家の役割や技術革新の意義についても、重要な問題提起を行なっている。現代の経済学でも取り上げられるオーストリア学派について、ここでは大きくミーゼス、ハイエク、シュンペーターの3つの主張を取り上げる。彼らの提起はきわめて重要だが、しかし、彼らの恐慌についての理解は、決定的に誤っていた。そのため彼らは結局、傍流へと転落してしまうことになる。(全16話中11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分52秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2023年2月15日
≪全文≫

●ミーゼスが提起した「そもそも計画経済は可能なのか」


―― その一方で、先ほど少し見たオーストリア学派は非常に清算主義的といいますか、「大恐慌を機に潰れるべきものは潰れろ」という主張でした。ただ一面、マルクス主義の計画経済的なあり方はダメだと批判していたのも事実なのですね。

柿埜 オーストリア学派は評価がとても難しい人たちで、ミーゼス、ハイエクは特にそうです。「市場経済の重要性」を非常に分かりやすく説明していて、古典派的な発想の経済学には欠けていた「企業家や市場が知識を発見する上で果たす役割」という点を非常に強調します。シュンペーターの技術革新の話もそうですが、オーストリア学派の発想は現代の経済学にも取り入れられていて、非常に大事なところがあります。

 ミーゼスは、「社会主義はそもそも計画経済をできるのか」という非常に重要な問題を提起した人です。社会主義は全部が国営の社会です。全部が国営ということは、価格も何も存在しないわけです。もちろん国が価格を定めることは擬似的にはできますが、価格が決まっていない状態を厳密に行う(全て国営にしてしまう)とどうなるか。

 消費者の場合、消費者が何をほしいかということ(の判断)は「消費者が買うもの、買いたいものが不足するか、それとも余ってしまうか」で何とかなります。ですが原材料については、原材料自体をほしいと思う人はいません。全部が国営だったら、原材料の値段は分からない。つまり、例えば鉄をたくさん使うべきなのか、アルミをたくさん使うべきなのかということは、全てが国営だったら判断できなくなってしまうのです。

 ミーゼスは「全てが国営の社会は、価格は存在しないし、資源の価値は判定できない。だから合理的な経済計画など不可能だ」ということを指摘したわけです。

 新しい技術についても、企業家が「こういうものを組み合わせたら、うまいものができるのではないか」「こういうものを組み合わせたら、新しい何かが作れるぞ」と発見することについて、政府がその代わりをすることはできません。少数派の意見を、政府の官僚的な部会が「これがいい」と取り上げることは滅多にないし、取り上げてもたいていが無茶苦茶なアイデアであることがままあります。でも、誰も責任を取らないし、失敗したら誰か(の会社)が倒産するわ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二