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オーストリア学派…ミーゼス、ハイエク、シュンペーター

本当によくわかる経済学史(11)オーストリア学派の真実

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
世界大恐慌の後、マルクス主義経済学の計画経済を批判したのが、オーストリア学派といわれるグループであった。彼らは、「そもそも計画経済が可能なのか」という本質部分や、その大きな弊害を鋭く突いた。また、企業家の役割や技術革新の意義についても、重要な問題提起を行なっている。現代の経済学でも取り上げられるオーストリア学派について、ここでは大きくミーゼス、ハイエク、シュンペーターの3つの主張を取り上げる。彼らの提起はきわめて重要だが、しかし、彼らの恐慌についての理解は、決定的に誤っていた。そのため彼らは結局、傍流へと転落してしまうことになる。(全16話中11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:52
収録日:2022/06/08
追加日:2023/02/15
≪全文≫

●ミーゼスが提起した「そもそも計画経済は可能なのか」


―― その一方で、先ほど少し見たオーストリア学派は非常に清算主義的といいますか、「大恐慌を機に潰れるべきものは潰れろ」という主張でした。ただ一面、マルクス主義の計画経済的なあり方はダメだと批判していたのも事実なのですね。

柿埜 オーストリア学派は評価がとても難しい人たちで、ミーゼス、ハイエクは特にそうです。「市場経済の重要性」を非常に分かりやすく説明していて、古典派的な発想の経済学には欠けていた「企業家や市場が知識を発見する上で果たす役割」という点を非常に強調します。シュンペーターの技術革新の話もそうですが、オーストリア学派の発想は現代の経済学にも取り入れられていて、非常に大事なところがあります。

 ミーゼスは、「社会主義はそもそも計画経済をできるのか」という非常に重要な問題を提起した人です。社会主義は全部が国営の社会です。全部が国営ということは、価格も何も存在しないわけです。もちろん国が価格を定めることは擬似的にはできますが、価格が決まっていない状態を厳密に行う(全て国営にしてしまう)とどうなるか。

 消費者の場合、消費者が何をほしいかということ(の判断)は「消費者が買うもの、買いたいものが不足するか、それとも余ってしまうか」で何とかなります。ですが原材料については、原材料自体をほしいと思う人はいません。全部が国営だったら、原材料の値段は分からない。つまり、例えば鉄をたくさん使うべきなのか、アルミをたくさん使うべきなのかということは、全てが国営だったら判断できなくなってしまうのです。

 ミーゼスは「全てが国営の社会は、価格は存在しないし、資源の価値は判定できない。だから合理的な経済計画など不可能だ」ということを指摘したわけです。

 新しい技術についても、企業家が「こういうものを組み合わせたら、うまいものができるのではないか」「こういうものを組み合わせたら、新しい何かが作れるぞ」と発見することについて、政府がその代わりをすることはできません。少数派の意見を、政府の官僚的な部会が「これがいい」と取り上げることは滅多にないし、取り上げてもたいていが無茶苦茶なアイデアであることがままあります。でも、誰も責任を取らないし、失敗したら誰か(の会社)が倒産するわ...
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