本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アダム・スミス「見えざる手」の真実とリカード「比較優位」
本当によくわかる経済学史(3)見えざる手と比較優位の真意
政治と経済
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
古典派経済学の中で、最も重要な人物がアダム・スミスである。『国富論』を著した彼には「見えざる手」という有名な言葉があるが、実は必ずしも自由放任を説いたわけではないという。ではスミスの本当の主張はどういったものだったのか。また、スミスの理論を洗練させたリカードの「比較優位」の正しい捉え方についても解説する。(全16話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分53秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2022年11月30日
≪全文≫

●アダム・スミスによるイギリス重商主義に対する痛烈な批判


―― それでは、いよいよ古典派経済学についてです。よく聞く名前としてアダム・スミス、あるいはリカード、ジョン・スチュアート・ミルが出てきますが、それぞれどのようなことを主張したのでしょうか。

柿埜 一番重要なのはスミスの話です。その考え方を発展させたのが、その後のリカードやミルですから、まずスミスのことを説明します。

 スミスは『国富論』という、1776年に出版された本で非常に有名な人です。彼は、「重商主義の考え方はおかしい」ということを、この本の中で指摘しました。彼が言ったことは非常に簡単で、先ほど(第2話)先取りしてしまいましたが、「市場で皆が自発的な交換をすることは、お互いにメリットがなかったら行わない」「お互いにメリットがあるからこそ交換をする」ということです。つまり、「交換は皆に利益をもたらす活動だ」ということを、スミスは指摘したのです。

 一国内で交換して、皆で分業して仕事をすることは、その国をとても豊かにする活動です。得意な商品を得意な人が作って、その人から買ったほうが、自分で作るよりもいいに決まっている。農業が苦手な人が農業を自分で行うよりも、農家から買ったほうがいい。自分は得意なことをやればいい。それで社会が豊かになるのならば、国同士でも同じことが成り立つのではないか。これは当たり前のことだということで彼は、重商主義者が当然だと思っていた保護貿易ではなく、「自由に貿易するほうがむしろ社会が豊かになる」と言います。

 自発的な交換のメカニズムということでは、国内の取引の場合も、海外の取引の場合も、まったく一緒だということが、まずスミスの指摘した重要な点です。これは当時のイギリスの重商主義に対する重大な批判だったのです。

―― 当時は保護貿易が普通だったわけですね。

柿埜 保護貿易が普通で、「(重商主義者もこのような考え方をしていたのですが)植民地をどんどんつくって、そこを支配して、植民地からいろいろな産物を取り入れる。そうして植民地帝国の中で自給自足することが素晴らしいのだ」という考え方をしていました。

―― 一種の「富の収奪」ですね。

柿埜 スミスは、「そんなことはしなくていい。植民地などいらない」と言ったわけです。


●「見えざ...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(4)荘園発生から武家の時代、王政復古へ
武士が推進した“私”の増殖…中央集権はいかに崩れたか
片山杜秀
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二