本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ケインズ革命への誤解…真に独創的なのは、どの部分か?
本当によくわかる経済学史(10)「ケインズ政策」の誤解と真実
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
不況の際は政府の財政出動によって景気回復を図る。これがケインズの政策であり、1929年の大恐慌を救ったのはケインズ革命によるものだと一般にはいわれるが、実はこれは必ずしも正しい理解ではないと柿埜真吾氏は言う。ケインズが本当に主張したことは何だったのか。真の独創性はどの部分だったのか。なぜ後世に誤解されるに至ったのか。論点を4つ挙げて考察する。(全16話中10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分19秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2023年2月8日
≪全文≫

●「ケインズ革命」は実は難しく、誤解されている


―― まさに「ケインズ革命」と呼ばれるような事象が起きてくるわけですが、ケインズ革命は一般には「よく効果があった」と言われます。「大恐慌を救ったのは、まさにケインズ的な政策だ」というのが一般的な理解ですが、ここはどう理解すればいいのでしょうか。

柿埜 よく「大恐慌はケインズ革命のようなものによって終わった」と説明されるのですが、ケインズの本が出たのは1936年です。実は大恐慌と『一般理論』は、直接的な関係はありません。

 ケインズ革命は、実は難しいところがあります。「自由放任主義の新古典派経済学が、それまではすごく優勢だった。失業などは自発的なもので、本当に困っている人などいないと皆が言っていた。大恐慌が起こって、そうではないことが明らかになり、ケインズが『自発的ではない失業はある』ことを証明した。そこで公共事業を行ったら景気が良くなることを証明した。そして、ケインズによってマクロ経済学がつくられた」というのが一般的な理解です。

―― そうですね。おっしゃる通りです。

柿埜 ですが、実はこれは正しくないところが多々あります。

―― 正しくないのですか。

柿埜 何かというと、先ほどもお話ししましたが(第7話)、新古典派は実は、それほどガチガチの自由放任主義者の集団ではありません。フィッシャーは「きちんと金融緩和しろ」と叫んでいましたし、アメリカの新古典派のグループに「シカゴ学派」といわれるシカゴ大学を中心とした経済学者がいましたが、彼らも懸命に「公共事業を行って、金融緩和をしなさい」と言っていました。また、(やや言い方が悪いのですが)ケインズが目の敵にしていたピグーという経済学者も「公共事業を行うべきだ」と言っていたのです。

―― では皆、言っていたわけですか。

柿埜 皆が言っていたので、実はケインズの独創的な点は、そこではないのです。では何がケインズ革命なのか。「それまでマクロ経済理論や景気循環の理論がなかった」というのも、明らかに正しくありません。

―― そうですね。皆さん、言っていたのですからね。

柿埜 それから「市場が失敗するという発想をケインズが出した」というのも事実ではありません。むしろ新古典派の経済学者たち(ピグーがそうです)は、市場が失敗する可...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
国家の中で個人が楽しく生きるために、なぜ「中間団体」が重要か
片山杜秀
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(34)『オデュッセイア』の秘密と愉しみ
【10min解説】大ヒット映画『オデュッセイア』がもっと楽しくなる神話講義
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(2)高齢者総合機能評価とフレイル
“マッチョな老衰”はいない!?若い頃からいかに骨格筋肉量を蓄えるかが健康長寿の鍵
小川純人
「満洲」から考える日本とアジア(6)21カ条の要求と第一次世界大戦
日本が中国に出した「21カ条の要求」の罠と必然…不安定な満洲利権を手にした日本が直面した難題とは?
宮脇淳子
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(5)東洋的リーダーシップ
『貞観政要』が人気…日本の経営幹部研修で好まれる理由
三谷宏治
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸