本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
新古典派経済学への誤解と実際…特徴と古典派との違いは?
本当によくわかる経済学史(7)新古典派経済学とは何か
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
限界革命以降に登場した「新古典派経済学」。これについては、ケインズ経済学やマルクス経済学と対立するものだという誤解が現代でも非常に多い。それはなぜか。また、その具体的な中身は何なのか。新古典派の具体的なグループとしてマーシャルらのケンブリッジ学派、ワルラスらのローザンヌ学派、メンガーらのオーストリア学派を取り上げて、古典派経済学との違いとともに解説する。(全16話中7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分18秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2022年12月28日
≪全文≫

●「新古典派」への誤解――現実の「新古典派」はもっと柔軟


―― 続きまして、新古典派経済学です。古典派に「新」がつくわけですが、これはどういうことなのでしょうか。

柿埜 「新古典派」とは基本的に、限界革命以降に出てきた経済学のことを総称して呼ぶ名前です。

 これはしばしば、特に左派系の方の書いたものの中には、誤解があります。「ケインズ経済学とマルクス経済学と対立するものが新古典派経済学である」とか、「自由放任を唱える極端な市場原理主義の、極端な集団がある」といった理解をしている方がとても多くいます。反緊縮を唱える方々は、「緊縮主義とは新古典派経済学である」とよく言うわけです。

 だけど、これは正しいものでは全くありません。「新古典派経済学」という特定の結束力が強いグループがあるわけではないのです。これは古典派に関してもいえるのですが、新古典派はなおさらそうです。

 現在、「新古典派」という言葉を使うときは何を意味しているか。1870年代以降の経済学のグループの総称を、狭い意味で「新古典派」といいます。特にケンブリッジ学派というグループの人たちのことを、主にそう呼びます。

 ですが、今現在、「新古典派」という言葉を使うときは、まったく違う意味で使っています。価格が伸縮的で、経済が長期的に安定した状態にあるときの経済理論のことを、「新古典派モデル」と呼んでいるのです。これは「新古典派」というグループがあるのではなく、短期的な経済の分析に使うモデルを「ケインズモデル」と便宜的に呼び、長期的に成り立つ議論を呼ぶときに「新古典派モデル」という名称を便宜的に使っているだけなのです。

―― それは、どういう違いですか。

柿埜 短期的に価格は、景気がすごく悪くなったからといって急に下げたり、急に上げたり、そういったことはあまりできません。だから、「価格が伸縮的に変化しない」ということです。

 それから、例えばコロナショックがあると、それまですごく発展していたサービス業で、その業界の需要が落ちることが予想されます。実際、落ちています。そうなったときに、今、サービス業で働いている人たちは、すぐに別の市場に移って別の仕事を始めることはなかなかできません。こういった一時的な変化があったとき、すぐに対応することはできないわけです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎