●歴史を振り返り共通点を探る
養田でございます。本日は「歴史的転換点における影の主役 インフレ」と題してお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
運用を長くやっていると、過去はどうだったのだろうと調べることがあります。ブラックマンデー、リーマンショックなど、相場の大きな下落局面を調べるのはもちろん、現在のような金融システムが発展する前の状況についても共通点がないか、調べたりします。
経済危機が発生する際、現在では政府と中央銀行の信用をベースに、国債発行による財政支出や金融緩和政策で危機対応しますが、江戸時代における緊急時の追加財源は、金の量を減らして貨幣を作り直す改鋳で得られる利益や、豪商のような民間からの借入金がメインでした。
また、何が経済・金融危機の発端になっているか、例えば、安全保障の脅威、紛争との関係、震災や疫病、パンデミック発生後の財政・金融政策などについても調べ、共通点がないかみることもあります。このような昔の状況なども観察し、たとえシステムは違っても実質的に同じ仕組み、原理が働いていないかをみていくのです。
●現代日本と幕末の共通点
このように過去との共通点をみていく中で、最近気になることがあります。それは、「歴史的転換点」や「社会情勢の大きな変化」と、「紛争」「震災」「疫病」、そして「インフレ」との関係性です。
これらのキーワードを並べていくとあることに気づきます。すなわち、過去のある時代と被るように見えるのです。
1つは、江戸時代終盤から幕末にかけての時期です。そしてもう1つは、1900年代前半の第1次大戦から第2次大戦の間です。
こちらは幕末の年表です。江戸時代の終盤にかけ、例えば、右上のあたりにあるように天保の大飢饉などが発生、中段の1853年のペリー来航から1867年の大政奉還まで、地震やコレラなど、これだけの震災や疫病が発生しています。1855年の安政大地震によって水戸藩で徳川斉昭(なりあき)を支えていた藤田東湖が亡くなったのは有名な話です。
また、黒船来航にしても、今風にいえば安全保障上の脅威の高まりです。欧米列強が植民地政策を進める中、英、仏、露など欧州各...