歴史的転換点における影の主役「インフレ」
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
紛争・震災・疫病・インフレ…幕末と重なる現代日本の姿
歴史的転換点における影の主役「インフレ」(1)現代と幕末の共通点
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
紛争やパンデミックなど、さまざまな事象に直面する世界の中で、日本経済も揺れ動いている。不確実な社会情勢の影響を受ける金融市場を見極めるためには、歴史を顧みることが有効である。過去を振り返ると、「紛争」「震災」「疫病」、そして「インフレ」との関係性が、幕末という時代と重なっていることが見えてきた。当時行われた貨幣の改鋳、また金銀交換比率問題などを取り上げながら、幕末と現代の共通点を解説していく。(全3話中第1話)
時間:13分00秒
収録日:2023年12月26日
追加日:2024年2月15日
≪全文≫

●歴史を振り返り共通点を探る


 養田でございます。本日は「歴史的転換点における影の主役 インフレ」と題してお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

 運用を長くやっていると、過去はどうだったのだろうと調べることがあります。ブラックマンデー、リーマンショックなど、相場の大きな下落局面を調べるのはもちろん、現在のような金融システムが発展する前の状況についても共通点がないか、調べたりします。

 経済危機が発生する際、現在では政府と中央銀行の信用をベースに、国債発行による財政支出や金融緩和政策で危機対応しますが、江戸時代における緊急時の追加財源は、金の量を減らして貨幣を作り直す改鋳で得られる利益や、豪商のような民間からの借入金がメインでした。

 また、何が経済・金融危機の発端になっているか、例えば、安全保障の脅威、紛争との関係、震災や疫病、パンデミック発生後の財政・金融政策などについても調べ、共通点がないかみることもあります。このような昔の状況なども観察し、たとえシステムは違っても実質的に同じ仕組み、原理が働いていないかをみていくのです。


●現代日本と幕末の共通点


 このように過去との共通点をみていく中で、最近気になることがあります。それは、「歴史的転換点」や「社会情勢の大きな変化」と、「紛争」「震災」「疫病」、そして「インフレ」との関係性です。

 これらのキーワードを並べていくとあることに気づきます。すなわち、過去のある時代と被るように見えるのです。

 1つは、江戸時代終盤から幕末にかけての時期です。そしてもう1つは、1900年代前半の第1次大戦から第2次大戦の間です。

 こちらは幕末の年表です。江戸時代の終盤にかけ、例えば、右上のあたりにあるように天保の大飢饉などが発生、中段の1853年のペリー来航から1867年の大政奉還まで、地震やコレラなど、これだけの震災や疫病が発生しています。1855年の安政大地震によって水戸藩で徳川斉昭(なりあき)を支えていた藤田東湖が亡くなったのは有名な話です。

 また、黒船来航にしても、今風にいえば安全保障上の脅威の高まりです。欧米列強が植民地政策を進める中、英、仏、露など欧州各...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎