歴史的転換点における影の主役「インフレ」
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
歴史は「韻を踏む」…これからの日本経済のための視座
歴史的転換点における影の主役「インフレ」(3)「韻を踏む」歴史に学ぶ
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
「インフレと恐慌」と呼ばれる経済危機が繰り返し訪れる、第1次世界大戦以降の日本経済、財政政策の顛末には、当時との共通点の多い現在の日本が学ぶべき教訓が大いにある。最終話の今回は、戦間期終盤から戦後の日本を振り返り、積極財政むなしくインフレに至った経緯を見ていこう。これからの日本経済の行く末を見通すうえで重要なのは「韻を踏む」歴史への視座である。(全3話中第3話)
時間:8分59秒
収録日:2023年12月26日
追加日:2024年2月29日
≪全文≫

●国債発行を軸とした積極財政でも防げなかった戦後のインフレ


 財政が書いてあるグラフをご覧ください。こちらで財政支出と軍事費の関係について、ご覧いただきます。

 こうしてみると、こちらも1937年あたりから急速に支出額と債務の額が増加しているのが分かると思います。1937年の日中戦争開始から臨時軍事費特別会計による軍事支出が開始され、このための資金調達は、主に国債発行と日銀引き受けで行われました。

 この時、日銀の国債市中売却も継続されましたが、この頃になると、日銀が民間銀行宛に行う国債担保貸出の金利を国債金利以下とし、銀行が国債を保有すると利ざやが生まれるようにします。

 次に日銀のバランスシートのグラフをご覧ください。

 この当時の日銀のバランスシートを見ると、高橋財政開始の1932年以降、濃い青の部分、国債の引き受けなど政府に対する貸出が増えていますが、それ以降と比べると、それほど大きな額とはいえません。

 しかし2.26事件を経て、臨時軍事費特別会計が始まり、その後太平洋戦争に至る頃には日銀のバランスシートは驚異的なペースで拡大します。濃い青の部分に加え、やや濃い青、すなわち国債を担保とした民間向けの貸し出しが増えているのが分かります。

 こうして民間銀行にも国債保有インセンティブを与え、その他、資本規制、金利統制なども行うことにより、表面上国債は消化されていきます。

 また、この時、政府は貯蓄推奨も行っています。実は、国債発行を原資とした政府支出は、海外への支払に使われない限り国内の誰かに支払われており、かなりの量の資金が銀行預金として滞留していたと思われます。これは、民間も含めての国債を消化するシステムがワークしていたと見ればいいでしょう。余談ではありますが、政府支出の利用目的は違っても、国債消化の仕組みは現在と本質的にあまり違わないように思います。

 こうして、驚異的な額の国債発行により財政支出が行われますが、物価統制もあって、インフレはそこまで酷くはなかったのだと思います。しかし結局、戦後はハイパーインフレとなります。

 為替とインフレのグラフに戻ります。このグラフの右欄外に、赤のグラフの延長とし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦