本当によくわかる経済学史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「ヒトラーの経済政策はケインズ的で大成功だった」は大嘘
本当によくわかる経済学史(12)ヒトラーの経済政策への誤解
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
「ヒトラーはケインズ的な政策でドイツ経済を復活させた」などと、ナチスの経済政策を評価する言説も日本では多い。だが、これはとんでもない間違いだという。では、当時のドイツの実状とは、いかなるものだったのか。そこにはおそるべき真実が隠されていた。ヒトラーの経済政策への誤解と真相を解説する。(全16話中12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分59秒
収録日:2022年6月8日
追加日:2023年2月22日
≪全文≫

●ヒトラーの経済政策が「素晴らしかった」はまったくの誤解


―― 恐慌をめぐるいろいろな議論がありますが、ケインズ的な政策が良かったという一例としてよく取り上げられるものに、ヒトラーの経済政策があります。軍拡で軍需産業をガンガン行ったり、アウトバーン計画のような公共事業をたくさん行ったりした結果、ドイツという国が短期間に立ち直り、国民が圧倒的な支持をしたのではないかと言われます。これについては、どのように見ていますか。

柿埜 これはものすごく大きな問題だと私は思っています。

―― 問題なのですね。

柿埜 はい。ヒトラーの政策は「その後は悪かったけれども、経済を復興させたことは素晴らしかった」といったように言われます。これは本当に間違っていて、そうではないのです。

―― 実際はどうだったのですか。

柿埜 実際はまったくの誤解で、まずヒトラーが景気を回復させたのではありません(ある意味では回復させていますが)。そうではなく、根本的な問題として、それ以前のワイマール共和国の政治家たちが無能すぎたのです。

 彼らは金本位制の維持にこだわり、大量の取付が起こっていても引き締め的な金融政策をずっと続けていました。先ほどのアメリカの例(第8話)とまったく同じで、貨幣が激減するのを放っておいたのです。そういった政策が、景気をものすごく悪くしました。それで失業者たちが絶望して、とてつもない過激な政党であるナチスや共産党といったところに投票するようになったのです。

―― あの時は両極が一気に政局的に伸びているというところでしたね。

柿埜 ええ。要するに共産主義は、「金持ちに責任がある。金持ちこそ君たちが困窮している原因だ」という考え方です。ナチズムは、「ユダヤ人という特定の人が陰謀を企んでいて、そのせいで君たちは貧乏なのだ」という考え方です。

 実はこれは、そのまま重なっています。なぜかというと、ユダヤ系の人たちは、ドイツの中では裕福な人たちが比較的多かったのです。だからドイツ共産党も、反ユダヤ的なレトリックをこの時期にとても使っています。ナチスも、です。だから当時の人々の偏見を取り入れた社会主義だったのです。「国家社会主義ドイツ労働者党」 がナチスの正式名称です。

―― そうです...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史