●想像もできない医療水準に達している小児科学
慶應義塾大学医学部小児科の高橋孝雄と申します。今日は小児科医として30年以上仕事をしていた経験を踏まえて、子どもが育っていくということ、その中で遺伝子の力、そして環境の力がどのように相互作用しながら子どもを育んでいるのかということについてお話しさせていただきます。男性であり、小児科医である私がなぜ、子育てについてお話をしたいと思ったのか。そのようなこともふくめてご理解いただけるような話にさせていただきたいと思います。
まずはさておき、現代の小児科学というのは、どういう学問なのかについてお話しさせてください。私が小児科医になった30数年前の話ではなく、まさに現代の最先端の小児科学のご紹介です。
全ての医学がそうであるように、小児科学も自然科学としての学問の側面が非常に重要です。すなわちサイエンスとしての小児科学があります。今スライドの上半分に出ているように、小児科学は人の体が形作られる過程(成長)とそこに機能が宿る過程(発達)を科学する学問です。そして、それらの異常やその原因を突き止め、治療法を開発し、実際に治療を行います。
現在の小児科学は、そこまで進歩してまいりました。生物学・自然科学としての小児科学は、私が医師になった30数年前とは違い、長足の進歩を遂げております。例えばiPS細胞に代表されるような、学問的な言葉で正確にいうと「幹細胞生物学」、基礎医学としての幹細胞生物学が非常に進歩した結果、現在の小児科学は私が小児科医になった頃と比べても、医療水準として想像もできなかったような進歩を遂げているわけです。
●小児科学の社会人文科学としての側面
その一方で、これもまた全ての医療に関係したことですが、小児科学も社会人文科学としての側面、社会人文科学としての使命を持っています。
スライドの下半分に出ているように、小児科学の社会人文科学としての使命は、子どもたちが、たとえそれが生まれつきのものであったとしても、全ての困難を克服して、将来、人として幸せな人生を手に入れる。これが小児科学の最終目的(目標)です。そのためには育児環境、家庭環境、学校環境から始まって、広く社会環境を整備し、子どもたちがゆくゆく幸せになるように。そういうことを目指す社会人文科学で...