●世界と日本ではジョークを話す人へのマナーが違う
―― そもそも、一番最初にその紛争地のジョークをお書きになったときに、そのきっかけになったのはルーマニアでのご体験だったということでしたけれど、先生はそのルーマニアで、孤児など、マンホールに住んでいるような子どもたちの取材をされて、ノンフィクションの本をお書きになられていますが。
早坂 首都のブカレストで、マンホールに住んでいる子どもたちが、もう何百人といました。もう20年ちょっと前の話なのですが、その取材をしたくてルーマニアに移住し、マンホールに潜りながら取材をしていたのです。そんな中でルーマニアのジョークというか、ルーマニア語では「バンク」というのですけれど、バンクがたくさんあって、驚きというか、面白いなあと思ったのです。
―― それはいわゆるジョーク、バンクがある日常なり、その光景というのは、皆さんどういうふうにしてやっているのですか。
早坂 何か、日本と違うなというところでいうと、例えば友人同士でお酒を飲んでいるときに、「最近1つ新しいバンクを聞いたんだけど」と言って披露し始めるというような場があったり、また、家庭の中でお父さんが、「このバンク、知ってるか?」と言って話し始めたりするところを何度か見ました。
それで、こういう感じで笑い話をするというのは日本ではないかなと思ったのです。アメリカなどでもそのような感じはあるのですが、何か新鮮ですよね。日本でそのような、「ちょっと笑い話を最近聞いたけれど、聞いてくれ」などということはないですね。
―― そうすると、周りはどういう反応をするのですか。
早坂 周りは、ジョークをこれから話そうとしてくれる人に対して、それを邪魔してはいけないというか、ある種のリスペクトがあるのです。例えば、もしそのジョークを知っていたとしても、「あっ、それ知ってる、知ってる」などとは言いません。それがマナーなのです。
―― なるほど。
早坂 日本だとけっこう、何か話の中で、「あっ、それ、知ってる」とすぐに言ってしまうかもしれません。
―― あと、シーンとなったときに、すべり芸で持っていく、ということはあるかもしれないですね。
早坂 日本人もすごくお笑いは好きで、例えば居酒屋などに行けば、どこのテーブルでも日本人はすごく笑っていますよね。あのようなものは、欧米のバーとか...