読書とは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
幼少期から四書五経を読み、12歳で『自教鑑』を著す
読書とは何か(3)人生修行の素材としての読書
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
読書が私たちにもたらす意味や影響は、江戸時代も現代もさして変わらない。江戸時代の偉大な為政者である松平定信と、教育者・吉田松陰それぞれの読書観をエピソードを交えて紹介しつつ、読書という行為がもつ意義や楽しさについて語る。(全6話中第3話目)
時間:15分09秒
収録日:2014年4月9日
追加日:2014年7月25日
≪全文≫

●松平定信の器量を示す早熟な読書歴


 少し私たちからかけ離れた例を取り上げてみたいと思います。

 皆さん、どなたでも日本人であればほとんどお分かりのように、18世紀から19世紀の頭に活躍した徳川幕府の老中、松平定信という人がいました。定信は、徳川吉宗8代将軍の孫であり、同時に彼は11代将軍の家斉に老中として仕えた、江戸時代、日本の近世を代表する政治家でありました。

 彼は子孫への指針として、自伝の『宇下人言』(うげのひとこと)という書物を書きました。これは岩波文庫にも入っている小ぶりの本ですが、そこにおいて、自分の読書歴を生活歴と重ねて披露しています。私たち平成の日本人、少なくとも今の私からすれば別世界のように感じる点があるというのが率直なところです。しかし、この別世界であるということも私たちの先人の一面であるということを承知で紹介してみると、このようなことを言っているのです。

 松平定信は、自分は7歳のときに『孝教』を読んだと言っています。『孝教』というのは、孔子が門人の曽参(そうしん)に孝道、すなわち親に対する孝行とは何かということについて述べたのを記録した経書であります。四書五経の流れです。その経書を読んだと言っているのです。

 8歳、9歳になると、あの有名な修身、治国、平天下、すなわちまず自分の身を修めて、次に国というものを治めていく、そのことによって天下を平らかにする、世の中全て天下を平和にしていくと、こういう道を説いた書物、これが四書の一つでもある『大学』ですが、これを8歳、9歳で読んだというのです。

 11歳の頃からは、自分は将来政治に携わるということを自覚したということなのでしょう。「治国の道」を積極的に学ぼうとして、思いついた工夫を自分で書きつけたと言っています。自分で本を書いた、図にも表現したというのです。

 12歳になった時に彼は何を触れたかと言うと、『自教鑑(じきょうかがみ)』を書いたと言っています。これは人倫の道、人間の守るべきモラルとは何か、あるいは君主はどのように政治を行うべきかという義務などについて触れた書物だというのです。自ら著すことによって自らを戒めてくという、こういう心得にしたというわけです。

 今の私たちからすれば、少なくとも私からすれば、まことに考えられないほど早熟であり、かつ私たちとの時代の違いを差し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎