●対話篇の設定はソクラテス晩年の時代
プラトンが書いた対話篇の特徴について述べていきます。
対話と対話で書かれた形態である対話篇は、実は英語でいうと両方とも「dialogue(ダイアローグ)」となります。直接議論を交わす「対話」は、ギリシャ語で「ディアロゴス」、英語で「ダイアローグ」で、作品として書かれたものもダイアローグです。英語の場合は「a dialogue」とか「dialogues」と数えるような形ですが、両方とも対話、対話篇のことです。
そういったものをプラトンがなぜ書いたかを考える上で、今から設定について考えていきたいと思います。というのは、対話篇は当然誰かが出てきて誰かと対話するからです。ほとんどの作品で、ソクラテスという人物が誰か特定の人物と出会います。複数の人と出会う場合と、一対一で対話する場合がありますが、そういう状況の中で議論を深めていくと、それが哲学の議論になっていく。その形態が対話篇です。
ソクラテスが出てくるということでお分かりだと思いますが、これは実はソクラテスが生きている時代、特に晩年の時代に設定されています。つまり、紀元前5世紀の後半から終盤の時代が実際の舞台になっています。
●対話篇の特徴その1:メインキャラクターがソクラテス
では対話篇のイメージを、5つほど特徴を挙げてお伝えしようと思います。
1つ目の特徴は、今いいましたように、全てではないですが、ほとんどの対話篇でソクラテスというメインキャラクターが登場することです。
そのメインキャラクターが誰かと会話するという形態を取ります。その場合、本当にいろいろな設定が可能です。誰も聞いていないような、二人だけの場所で親密な会話を交わすこともあれば、非常に多くの人がいる中など、複数の人とやり取りをすることもあります。場合によっては話者が入れ替わる、ということも生じます。こういうところはプラトンの文学的な才能の見せ所で、作品として非常に楽しめる作品もあれば、非常に密度の高い議論をする作品もあります。そこは、対話篇という、ある意味では共通のツールをさまざまなバリエーションで使い分けていくことになっていきます。
●対話篇の特徴その2:場所・時・語り手の設定と個性的な登場人物
2つ目の特徴は、今いったような状況を対話篇として表す場合、当然、場所と時、語り手という3つの設定がなされる...