西洋哲学史の10人~哲学入門
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ニーチェ:超人、ニヒリズム…善悪は弱者の嫉妬心にすぎない
西洋哲学史の10人~哲学入門(10)ニーチェ 超人
貫成人(専修大学文学部教授/文学博士)
ニーチェは牧師の家庭に生まれつつ、キリスト教の価値を全否定した。そこから見いだされた「強いニヒリズム」は、何が「善い」のかを価値付けするのが困難な中で、いかに現実と向き合うかを教えてくれる。こうした「超人」の思想からわれわれが受け取れるメッセージについて、専修大学文学部教授の貫成人氏が論じる。(全10話中第10話)
時間:11分11秒
収録日:2018年2月9日
追加日:2018年6月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●ニーチェは24歳という異例の若さで教授に抜擢される


 最後の10回目はニーチェです。ニーチェといえば、何といっても「超人」という考えが極めて有名です。これがどういうことなのかについてお話をします。

 ニーチェは、マルクスと同じように、19世紀の後半に活躍しました。19世紀の最後の年である1900年に亡くなっています。ドイツのライプツィヒという、昔の東ドイツに当たるところで生まれ、お父さんは牧師でした。彼は若い頃から極めて優秀な学生であり、24歳という異例の若さでバーゼル大学の教授に抜擢されます。ドイツは教授になるのが非常に遅いので、大体、若くても30代後半でなければ教授にはなれないのですが、24歳というのは、本当に異例中の異例の抜擢なのです。

 彼の主著は、有名な『ツァラトゥストラはこう語った』(以下、『ツァラトゥストラ』)、そして遺稿である『力への意志』です。本当は『ツァラトゥストラ』が一番重要な著作なのですが、これは非常に分厚く読みづらいので、ニーチェ自身が書いた『善悪の彼岸』『道徳の系譜』が入門書としては良いのではないかと思います。


●ニーチェの思想の中心は強いニヒリズムである


 『ツァラトゥストラ』や『善悪の彼岸』『道徳の系譜』で示されている彼の思想を一言でいうと、ニヒリズムであるということです。ニヒリズムは、「ニヒル」というラテン語と、「イズム」という接尾辞から成っています。「ニヒル」はラテン語で無(ない、ナッシング)を意味する言葉で、日本語では虚無主義と訳したりします。

 通常は、普通だったら人々がこういうものが大事だなと考えている価値や目標、生きがいなどは全て虚しく、そんなものには実は価値がないのだ、そのためもう何をやったら良いのか分からない、何もやらなくて良いといった、少し後ろ向きなメンタリティのことを「ニヒリズム」と呼びます。ただしニーチェのニヒリズムは、そうした、いってみれば無気力と通じるようなニヒリズムとは全く異なり、むしろ逆の、いわば強いニヒリズムでした。それは一体どういうことなのでしょうか。


●ニーチェがいう善悪はルサンチマンから生まれる


 彼のニヒリズムの根底には先ほど申しました虚無主義があります。つまり、価値や生きがいには意味がないのだという洞察が根底にあるのです。なぜニーチェはこ...

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