子どもが言葉やその概念を学習する過程では、大人の側が知識として一方的に「教える」というやり方では、子どもの理解は促進されない。重要なのは、子どもが自分で「気づく」ように環境をつくってあげることである。そのことを「足場かけ」と呼んでいるが、そうしての教育のあり方や、ゲームを用いた遊びながら学ぶ具体的な手法について解説する。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●「教える」のではなく「足場かけ」をする
―― そこも非常に興味深いところで、先生のご本を読んでいて非常に面白かった点でもあるのですが、子どもがそういう直感、アブダクションで、もしかしたら白い動物というのはウサギかもしれないと。(あるいは)猫もいるのだとか、ヤギもいるのだと気づいていくかというところがすごく面白かったのです。
思わぬ形で言語なり、概念を身につけていく上で、ここをぜひ先生にお伺いしたいところだったのですが、よくなぜなぜ期とか、例えばお子さんが「これ、どうしてなの」「なんで月が満ち欠けするの」と訊いてみたりとか、いろいろな時期があると聞きます。その1対1の重要性というものがあるのかないか、ということをぜひ先生にお訊きしたかったのです。
例えば、子どもがこう疑問に思った。お母さんが、絵本の読み聞かせをしてくれていて、「ウサギってどれ?」と訊いたり、「この耳が長いのがウサギなの?」と訊いたりするようなシーンもあると思うのですけれど、この1対1でそういう概念というか、いろいろな気づきを与えていくことの意味というのは、どのようにお考えですか。
今井 ものすごくあると思います。ただ、1対1で「教える」ことはできないのです。
―― なるほど。
今井 だから、1対1でお話をして、その中で子どもが自然に気づいていく。そこが大事なところなのです。ですので、保護者の方、あるいはその周りの大人が「興味を持っているな、しめしめ、教えてやろう」と思うと、そもそも子どもはたいてい理解できないのです。
―― なるほど。そこは面白いところですね。理解をしてもらうためには、どういう働きかけがいちばんよろしいわけでしょうか。
今井 どういう働きかけをするか。いい材料をたくさん提示することでしょうか。
あと、私は「足場かけ」という言葉を使うのですけれど、教えるということは、ある意味で引っ張り上げてしまうのです。自分のところまで引っ張り上げようとするのが、一般的な「教える」です。でも、本当に子どもが記号接地ができる、自分で知識を習得できるというのは、引っ張り上げられたらできなくて、自分で上っていかなくてはいけないのです。自分で上っていくために、全部自分で行けるかといったら、階段が高すぎて行けないということもしょっちゅうあるわけです。
だから、高すぎる階段の1つの段を低く...