ヒトは共同保育~生物学から考える子育て
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チンパンジーは乱婚、ヒトは夫婦…人間の特殊性と複雑性
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ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直すことである。第1話では動物の配偶と子育てシステムについて解説するが、動物にはそれぞれの種に応じた配偶と子育てのシステムがあり、その組み合わせによって子育ての方法が決まっていくという。(全5話中第1話)
時間:9分32秒
収録日:2025年3月17日
追加日:2025年8月31日
≪全文≫

●基礎知識としての「ヒトは共同保育の動物だ」という特性


 長谷川眞理子です。今日は「ヒトは共同保育の動物だ」という話をしたいと思います。

 どのように子育てを行うか。誰がその中心になるか。こういうことは、文化によっても時代によってもずいぶん変わりますが、ヒトという動物がどんな生き物であり、そういう動物としてのヒトをちゃんと育てていくためには、母親だけではとてもできない。父親と母親の両親だけでもできない。動物として、そのような特性があるということをまず基礎知識として持ちたいと思い、この話を取り上げました。

 動物の中でも無脊椎ではなく、(比較的)われわれに近い哺乳類や鳥などの温血動物をみると、オスとメスがどうやって配偶するかという配偶のシステムと、そこでできた子どもをどうやって育てるかという子育てシステムの二つがあるわけです。

 配偶システムとしては「一夫一妻」「一夫多妻」「一妻多夫」、あるいはそういうもののない「乱婚」など、いろいろあります。一方で子育てシステムとしては、そうして生まれた子どもをまったく育てずに、勝手にやってもらうというのもあるし、雌(母親)のみが育てるのもある。鳥の場合にはたまに雄(父親)のみによる子育てもあります。魚などでは雄のみで子育てすることは結構あります。それから両親の両方がともに育てることもあります。

 このような配偶システムの在り方と子育てシステムの在り方の組み合わせによって、その動物がどのように配偶して子育てをするかということが決まるわけです。


●子どもの生存率が決める子育ての形


 どういう形になるかは、今の配偶システムと子育てシステムのいろいろな組み合わせによるわけですが、鳥は多くの場合、一夫一妻(ペア)で暮らします。鳥では一夫多妻や一妻多夫はあまりなく、ほぼ9割以上の鳥が一夫一妻(ペア)です。しかも両親がともに育てるのが一般的です。

 卵を産んでしまうと外に出す。それを誰が温めるか。(卵から)雛が出てきたら、誰が餌を持ってくるか。これは、両方とも別に母親でなくてもいいわけで、出てきた卵は父親が温めてもいいし、母親が温めてもいいし、いろいろ別の個体がやってもいい。

 (鳥の)子育てはとても大変です。卵から雛がかえると、おねだりをす...

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