ヒトは共同保育~生物学から考える子育て
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狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
ヒトは、そもそもの生き方であった狩猟採集生活でも子育てを分担してきた。それは農業社会においても大きくは変わらなかったが、しかし産業革命以降、都市化が進み、貨幣経済と核家族化と個人主義が浸透した。ヒトが従来行ってきた共同保育は崩壊し、母親あるいは両親だけに子育ての責任を負わせる、いわば社会の分断が広がってしまった。個人を単位とするプライバシーが優先される現代社会で共同保育を取り戻すにはどうすればいいのだろうか。(全5話中第3話)
時間:9分45秒
収録日:2025年3月17日
追加日:2025年9月14日
≪全文≫

●現代社会が変えたこと、変わらないこと


 そこで現代社会ですが、今の社会はヒトが狩猟採集を行い、みんなで一緒に頑張ってサバンナに進出するような舞台とは、ずいぶん異なる文明になってしまいました。

 また、近年の産業革命以降、都市化が起こります。都市ができると、みんなが都市に出てくる。そして、産業構造が一変する。さらに、貨幣経済があまねく浸透する。このため価値観の全てが個人主義的になり、「個人の力で」「個人の能力で」「個人の責任で」ということになっていった。

 また、都市で働くと職住分離になります。職場で仲良しの人がいても、家に帰るとその人とは離れているので、何かちょっと頼むようなことはできない。そういうことが普通になってきましたが、こういう事態はごくごく最近のことです。

 ヒトは長らくこんな暮らしをしてきたわけではありません。最近になって非常に変わったのですが、子育てが大変なこと、共同保育であることは変わらないわけです。

 それらがどのぐらい速いスピードで変わったかを表したのがこの図です。二足歩行する人類ができて600万年。サピエンスが出現して30万年。そして1万年ぐらい前に農耕、牧畜、定住が始まります。

 これを全部入れると600分の1しかなくて書けないので、農耕、牧畜、定住になった1万年前からを引き延ばしてみると、ここでいろいろな古代文明が出てきました。さらに、最後の200年から250年ぐらい前に産業革命が起こり、石油や石炭を燃やして自らエネルギーを得た。

 その(200年から)250年もまた1万年のスケールでは書けないので、引き伸ばして1本にしています。パソコン、携帯、インターネット、SNSなんてごく最近でしょう。電気、電話、家電製品、電車、飛行機、自動車、抗生物質など(もこの期間)。なので、人類が本当にいわゆる人類としての舞台で生活してきた600万年間に比べると、昨今のもう1秒にも満たないような進化的時間の間に、社会は劇的に変わった。ただ、もともとの身体のつくりや子育てにかかるコスト、頭の働き方などはそんなスピードで一緒についていって進化しているわけではないわけです。


●子育ての負担を分散していた狩猟採集生活の知恵


 では、ヒトのもともとの生計活動...

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