●マスク着用、都市封鎖――感染拡大防止に必死のイラン政府
皆さん、こんにちは。
前回はサウジアラビアにおけるCOVID-19、コロナの禍についてお話ししましたが、現在サウジアラビアと断交し、関係がこの数年険悪であるイランについて、今日はお話ししたいと思います。
イランの政府、あるいはイランの最高指導者たちは2020年7月5日、先月7月の頭に新型コロナウイルス感染症COVID-19の拡大防止策として、公共の場においてマスクを着用することを義務付けました。この前日の7月4日に、ロウハーニー大統領は、官公庁から行政サービスを受けたい者は、必ず健康に関する指針を守りマスクを着用しなければならない。このように述べて、規制を再強化する方針を打ち出しました。
また、COVID-19、新型コロナウイルス感染症、コロナの禍の拡大を受けて、7月3日から一週間、ペルシャ湾に面する南部の大きな州ホルムズガーン州で都市封鎖が行われました。特に重要なのはイラン最大の港町であるバンダル・アッバースが封鎖されているということでありました。
●宗教活動解禁も感染再爆発の要因に
イランでは2020年4月の初旬に感染者数は約62,000人、そして死者数は4000名となり、この感染者は政府の高官にも及びました。そして、実は中東にとって深刻なのは、イランを感染源とするように周辺諸国にも拡がったということが信じられている、ということです。また、その根拠もあるわけです。中東域内で最多の感染者数、死者数を出しているのがイランなのです。
イランでは新型コロナウイルス感染症の拡大がいったんは収束したかのように見えたので、そう判断して4月11日から社会経済活動を段階的に再開しました。首都テヘランでは4月18日からですが、全国的には4月11日から社会経済活動を再開したのです。そうすると、これはどの国も抱える悩みなのですが、これによって死者数や感染者数が減少化の傾向を示していたのが、また上昇に転じたのです。
このコロナによって宗教活動が制限され、モスクにも行けない、あるいは巡礼にも行けないということになると、イラン・イスラム共和国という正式名称が示唆しているように、イランという国の国是、もしくは国の成り立ちにかかわるそのリーダーシップをとっているイスラム法学者、宗教者たちは大変大きなダメージを受けるので、こうした宗教指導者の圧力によって、5月4日からモスクで集団礼拝を段階的に解禁してきたのです。集団礼拝というのは金曜日に行われる大きな礼拝です。
ところが、こうした政治的影響力や社会的影響力が大きい宗教界に配慮した結果、この規制の緩和を受けて感染の再爆発を招いた、ということがあります。ここで、イランが中東において際立ってコロナの猖獗(しょうけつ)、コロナの拡大が止まらない理由とは一体何なのか。そして、なぜ拡大したのかということを探ってみる必要があると思います。
●イラン政府の公式見解――感染拡大はアメリカの経済制裁のせいである
注目すべきことはイラン政府の公式見解であり、イラン政府は「アメリカの制裁だ」と、こういうことを言っているのです。つまりアメリカの制裁が新型コロナウイルス封じ込めの阻害要因になったと、こう語っています。アメリカが経済制裁等々をして医療制裁にもかかわるので、そういう医薬品やあるいはコロナウイルスのためのさまざまな器具、キット、こうしたものも入ってこないと言うのです。
従って、ある意味でいうと、論理的な因果関係でとらえれば、そういう見方というのもできなくはないのかもしれませんが、基本的にいうとこれはあまりにも大きな因果関係という他はありません。歴史のもう少し具体的、かつ局面における具体的分析をすると、やはり根本的にいうとイラン政府の対策が後手に回ったということに尽きるのです。
●中東最大の感染拡大の原因は、イラン政府の対策不備
イランにおける新型コロナウイルスの感染源は、ゴム州(これはホメイニ大統領が居住していた、そして、ハーメニー最高指導者たちが普段居住している場所)に滞在していた中国人、この中国人はあちらこちらで建築土木の作業をしています。あるいはさまざまな場面での知的または技術的な交流関係もあります。その建築や土木などに関わっていた中国人労働者や留学生たちが、どうも感染源だったのではないか、というのが説得的な主張であります。
また、逆に中国の武漢、ドナルド・トランプ大統領が「武漢ウイルス」とCOVID-19を名づけますけれども、そもそもの今回の新型ウイルスの発生源とされている武漢在住のイラン人の学生数名が、武漢で人々が隔離される前にゲラーン州(カスピ海に面したイランの北部の州)に帰国していたという点も、可能性として挙げられています。
政府は2020年1月31日という結構...