イスラム世界におけるコロナ問題
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イランに中東最大のコロナ感染拡大をもたらした理由とは
イスラム世界におけるコロナ問題(2)後手に回ったイランのコロナ対策
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イランは2020年4月にコロナウイルスの感染拡大が収束したとして、経済および宗教活動の再開に踏み切った。宗教界にも配慮してのことだが、その結果感染再爆発を招いてしまった。イラン政府の公式見解は「感染拡大はアメリカの経済制裁が医療制裁につながっているからだ」というものだが、根本的には政府の水際対策の不備が直接の原因だと山内昌之氏は言う。隣国インドが早期の段階で隔離や移動制限、都市封鎖を断行したのに対して、イランはこうした対策が後手に回った。そのため、感染源としてコロナ禍を中東に広めてしまった点は否定できない。(全4話中第2話)
時間:10分50秒
収録日:2020年8月4日
追加日:2020年9月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●マスク着用、都市封鎖――感染拡大防止に必死のイラン政府


 皆さん、こんにちは。

 前回はサウジアラビアにおけるCOVID-19、コロナの禍についてお話ししましたが、現在サウジアラビアと断交し、関係がこの数年険悪であるイランについて、今日はお話ししたいと思います。

 イランの政府、あるいはイランの最高指導者たちは2020年7月5日、先月7月の頭に新型コロナウイルス感染症COVID-19の拡大防止策として、公共の場においてマスクを着用することを義務付けました。この前日の7月4日に、ロウハーニー大統領は、官公庁から行政サービスを受けたい者は、必ず健康に関する指針を守りマスクを着用しなければならない。このように述べて、規制を再強化する方針を打ち出しました。

 また、COVID-19、新型コロナウイルス感染症、コロナの禍の拡大を受けて、7月3日から一週間、ペルシャ湾に面する南部の大きな州ホルムズガーン州で都市封鎖が行われました。特に重要なのはイラン最大の港町であるバンダル・アッバースが封鎖されているということでありました。


●宗教活動解禁も感染再爆発の要因に


 イランでは2020年4月の初旬に感染者数は約62,000人、そして死者数は4000名となり、この感染者は政府の高官にも及びました。そして、実は中東にとって深刻なのは、イランを感染源とするように周辺諸国にも拡がったということが信じられている、ということです。また、その根拠もあるわけです。中東域内で最多の感染者数、死者数を出しているのがイランなのです。

 イランでは新型コロナウイルス感染症の拡大がいったんは収束したかのように見えたので、そう判断して4月11日から社会経済活動を段階的に再開しました。首都テヘランでは4月18日からですが、全国的には4月11日から社会経済活動を再開したのです。そうすると、これはどの国も抱える悩みなのですが、これによって死者数や感染者数が減少化の傾向を示していたのが、また上昇に転じたのです。

 このコロナによって宗教活動が制限され、モスクにも行けない、あるいは巡礼にも行けないということになると、イラン・イスラム共和国という正式名称が示唆しているように、イランという国の国是、もしくは国の成り立ちにかかわるそのリーダーシップをとっているイスラム法学者、宗教者たちは大変大きなダメージを受けるので、こうした宗教指導者の圧力によって、5月...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓