イスラム世界におけるコロナ問題
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
サウジのインバウンド消費に影響を与えたコロナ19感染拡大
イスラム世界におけるコロナ問題(1)サウジアラビアのコロナ対策
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
山内昌之氏が中東、イスラム世界におけるコロナ問題について解説する。コロナウィルスはイスラム諸国にも深刻な影響を及ぼしている。サウジアラビアはハッジ(メッカ大巡礼)と犠牲祭の規模を縮小した。イスラムの重要な行事の規制はサウジのインバウンド消費や近隣アフリカ諸国の経済にも大きな影響を与えたが、感染拡大防止を優先したサウジ政府の対応は今のところイスラム諸国から評価されている。しかし、小巡礼さえ制限されている今、コロナ問題はイスラム信仰の根幹を揺るがしかねないと言える。(全4話中第1話)
時間:9分20秒
収録日:2020年8月4日
追加日:2020年9月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●コロナ禍におけるハッジと犠牲祭


 皆さん、こんにちは。

 今日はコロナと中東、あるいはコロナとイスラム世界といった観点から、現代世界を脅かしているコロナ19(COVID-19)についてお話ししてみたいと思います。

 コロナは中東はじめイスラム諸国にも大変深刻な危機を引き起こしています。ただ、興味深いのは、国の性格あるいは国の状況、国情や政体の違う国で異なる反応が見られるということであります。イスラム諸国は今年に関していうと、2020年7月28日の夜から30日にかけて、メッカ大巡礼・ハッジが行われました。続いて7月30日から8月3日、これは西暦でありますが、西暦の8月3日に犠牲祭を迎えるはずであり、また迎えた所がほとんどでした。

 犠牲祭、これはアラビア語で「イード・アル=アドハー」といいますが、これはもともとイブラヒム、すなわちアブラハムが息子のイスマイール(イシュマエル)を神にささげようとしたことから、そうした子どもを殺害するのにしのびないと、代わりに羊を犠牲としてささげるという、そうしたことにちなんだ行事です。これは、ちょうど断食月が終わった後の祝祭、「イード・アル=フィトル」といいますが、このイードすなわち、イスラム歴12月10日から14日にかけて行われる断食月終わりの祝祭と並ぶ最大の行事なのです。


●ハッジ、犠牲祭の規模縮小でサウジのインバウンド消費に影響


 例年であれば200万から300万の巡礼者がサウジアラビアにある聖地メッカを訪問するわけですが、今期のハッジはこのコロナ19(COVID-19)の感染拡大を受け、巡礼者がサウジ国内在住の数千人に限られることになりました。その内訳はサウジアラビア人30パーセント、外国人70パーセントといわれています。この犠牲祭に伴って多くの羊がほふられます。そうした羊をほふる盛大な行事や集団による礼拝、こうした規模が縮小されたということは言うまでもありません。

 サウジにおいてハッジと犠牲祭は、本来であれば最近の日本でも使われる言葉でありますが、大規模な「インバウンド」消費の機会ともなるはずでした。ハッジに関しては2019年のハッジの人数は248万9406人、海外からの訪問者は185万5027人といわれています。日本人なら分かる比喩を使っている専門家がおり、私も「なるほどな」と思ったのですが、このハッジのおよそ249万人という2019年の数は、大体正月の明治神宮等の大きな神...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆