不安定化したアフガン、ウイグル、中国
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
タリバンの勧善懲悪省が象徴的、強まるアフガンの恐怖政治
不安定化したアフガン、ウイグル、中国(3)タリバン政権の思想的特徴
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
国土の多くを山岳が占め、多民族によって構成されるアフガニスタンにおいて、多くの人々はどのような暮らしを送っているのか。また、タリバン政権はなぜこれほどまで批判されるのか。その政治的特徴について解説する。(全4話中第3話)
時間:9分55秒
収録日:2021年11月12日
追加日:2022年1月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●激しい紛争のイメージとは異なるアフガンの平和な農村地域


 皆さん、こんにちは。

 アフガニスタンについて、私たちが意外と知らないことはたくさんあります。特に意外なのは、アフガニスタンは農村、村落が1万8000ほどあると言われており、それが人口の約8割を占めていることです。

 この1万8000以上の村落は、実際に歴史的事実として、誰にも支配されたことがありません。これは本当にありそうでなさそうな話ですが、現実にあるのです。つまり、他から孤立していて、誰も入ってこないし、誰も支配しないので、ここでは平和が維持されているということです。逆にいうと、税金を徴収して、彼らに対して何かをきちっと利益として保証するという権力も存在しなかったということです。

 これは大変驚くべきことです。過去20年間をみると、実はタリバンが良いと言っているのは、都市住民でも1割強程度です。後のおよそ9割弱は支持しない、反対する、あるいはどちらでも良いということです。こういうことに、どちらでも良いという答えがあるのは不思議なことですが、そういう答えが返ってきます。

 つまり、アフガンの人たちは誰もタリバンの復活に熱狂的にはなっていません。また、一度も支配されたことがない農村があることは、タリバンに支配されたことのない国民がいるということでもあります。こうした人たちや国があることを考えると、その中からタリバンに対峙しようとする力は出てきづらいように思います。


●過酷な統治こそが良質な統治というタリバンの政治思想


 そのタリバンは、厳密なイスラム主義に基づいています。男女を非常に差別する、非民主的な組織団体です。これに対して、国際社会がいくら「けしからん」と批判したところで、基本的にアフガニスタン国内の独特の状況を考えれば、国際世論や他の社会の常識とは離れたところがあるのは仕方ありません。

 後で触れますが、確かにタリバンの政治は過酷な政治といえます。しかし、過酷な統治こそが、実は良質な統治だという思い込みや考え方は、歴史上結構ありました。それはアフガニスタンに近い例に、隣国イランの古代の帝国であった、ササン朝ペルシャの最初にブズルジュムヒルという人がいました。ブズルジュムヒルは人々の生きる糧、あるいは楽しみを奪うことが統治の実につながると信じた人です。また、人民を厳しく扱うべきというので...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新