不安定化したアフガン、ウイグル、中国
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アフガンで起こった現代の「風声鶴唳」、その真相に迫る
不安定化したアフガン、ウイグル、中国(1)アメリカ軍の撤退とアフガンの混迷
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
20年にわたる駐留を終え、2021年8月にアメリカ軍がアフガニスタンから撤退した。それをきっかけとして、武装勢力タリバンがあっという間に首都カーブルを制圧し、政権を復活させた。これまでアメリカを始めとする国際社会から多くの支援と訓練を受けてきたはずのアフガニスタン政府は、なぜこんなに簡単に負けてしまったのか。(全4話中第1話)
時間:12分00秒
収録日:2021年11月12日
追加日:2021年12月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●アフガニスタンで起こった世界屈指の「風声鶴唳」


 皆さん、こんにちは。

 中東について、しばらく触れていなかったので、今日は最新の中東情勢の一つとして、日本でも大変馴染みが深くなった、アフガニスタンの情勢についてお話ししたいと思います。

 ところで、古(いにしえ)の中国で、4世紀の383年に「ヒ水の戦い」が行われます。これは有名な前秦の苻堅が大敗北を喫した戦いです。苻堅が敗北を喫した理由は、「風声鶴唳(ふうせいかくれい)」です。すなわち、風の音に怯え、そして鳥の鳴き声に驚き騒いで、軍隊が敗走したことにあります。それが「風声鶴唳」という言葉のもとになっています。

 わが国でも似たエピソードがあります。1180年に平家の平維盛が、源頼朝が率いる東北の軍勢を迎え撃って、富士川を挟んで戦おうとした時、富士川に生息していた水鳥がバタバタっと飛び立ち、水鳥の音に怯えて、平家の軍隊が敗走するという事件がありました。

 これは歴史だけのことではありません。現実に、私たちの生きているこの時代にもおいても、平和な日本では予想、予測することさえできないことが先般に起きました。どこで起きたかというと、アフガニスタンです。ご承知のように2021年8月に、バイデン政権が、米軍をアフガニスタンから撤退させるという意思を表明して、アフガニスタンの国防軍は、直ちに解体、壊滅しました。壊滅したといっても、自ら敗走、解体してしまって、ともかく兵士が四散したので、これほど風声鶴唳なことはありません。あるいは富士川の水音にも比すべきことです。ただし、音さえ鳴っていません。鳥の鳴き声さえ無く、水鳥も音を出していません。そうして、急にバタバタッと、世界でも有数の、最新鋭のアメリカ製武器で武装された軍隊が雲散霧消したのは、驚くべきことです。世界屈指の風声鶴唳ではないかと思います。

 もう一つ驚くことは、首都カーブルで起こったことです。よく「カブール」といいますが、正しくは「カーブル」です。首都カーブルで起こった、イスラム原理主義勢力タリバンへの恐れが何をもたらしたかというと、当時のアフガニスタン大統領のアシュラフ・ガニ大統領が国外に直ちに逃亡するという事件が起こりました。まさに中国史風にいうと、「遁走(とんそう)」ということがぴったりくるかと思います。

 ガニ大統領が国民を見捨てて、とにかく真っ先に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
川口淳一郎