イスラム世界におけるコロナ問題
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
コロナを逆手に取ってアメリカを悪者にするイランの強かさ
イスラム世界におけるコロナ問題(3)アメリカ批判のイラン外交と政府の責任
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イランのハーメニー最高指導者は、感染拡大はアメリカによる医療テロが原因だと発言している。確かに、アメリカの数々の制裁がイランの外貨獲得を困難にし、医療崩壊を招いたことは否めない。しかし、感染拡大の根本的な原因はイラン政府の対応の遅れにあり、またサービス業従事者が多い産業構造がその背景にもなっているのだ。イラン政府はアメリカを強く批判し国際社会での同情を買おうとする一方、準同盟関係にある中国に対しては何ら責任を問わない。この点にイランの今後の新たな戦略意図があるのではないか。(全4話中第3話)
時間:13分06秒
収録日:2020年8月4日
追加日:2020年9月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●ハーメニー最高指導者のアメリカ批判


 皆さん、こんにちは。

 中東でも最大の国家、地域大国であり、かつ日本とは歴史的にもつながりが深いイランにおけるコロナの拡大についてお話ししてきました。

 前回、このコロナの拡大、あるいはその原因についての一端をお話ししましたが、その際いかにもイランらしいと言いますか、イラン・イスラム共和国の政治体制にふさわしい理由として、というところで前回は終わりました。

 ハーメニー最高指導者は、「コロナウイルスというのは敵によってばらまかれた。敵による陰謀だ」とこういうことを言っているわけなのです。この「敵」とは誰かというと、これはアメリカとイスラエルであって、「アメリカとイスラエルによる生物兵器攻撃の可能性がある」と最初このように話していてなかなかこのラインを越えられず、このイスラエル、アメリカ批判というものをしきりにしていたのです。


●遅かったイラン政府のコロナウイルス対策


 感染が最初に確認されて以降も、ちょうど国会議員選挙と重なったのですが、この国会議員選挙への投票というものを強く呼びかけた。これは逆なんですね。誰がどう考えても常識的にそういう選挙に関しては日延べするとか、あるいはとにかく皆が投票所に行かないような工夫をするとか、何かあるはずだったのですが、こういう初期段階において危機感を欠いていた証拠として、私はこの国会議員選挙などへの投票の強い呼びかけというのもあるのではないかと思うのです。

 つまり、3月下旬以降になって初めてイランの政府は商業施設の閉鎖、あるいは日本では普通「社会的距離」と言いますけれども、「ソーシャルディスタンス」ということを言い出した。ソーシャルディスタンス、これを「社交距離」という言い方もありまして、この社交距離というのは、私は面白い表現だと思いますが、人と人が交わるという意味でいうと、非常に抽象的かつ一般的な「社会的」というよりもこの「社交距離」というほうが、面白いという気もします。いずれにしても、このソーシャルディスタンスにおける初めてのキャンペーンをして、今度は逆に非常に厳しい対応を取るようになったわけです。


●サービス業従事者が多いのも感染拡大の背景


 イランにおいてもう1つあまり知られていないのは、イランというと石油産業、石油の掘削、あるいは石油の製品による産業部...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎