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酒豪認定は20リットルから?古代中国の強烈なお酒事情

古代中国の「日常史」(5)古代中国の宴会文化

柿沼陽平
早稲田大学文学学術院教授
概要・テキスト
宴会文化を皮切りとして、お酒に関する古代中国の日常史研究はまだまだある。「二日酔い」のような、現代にも通ずる飲酒文化が当時から存在したことを前回(第4話)紹介したが、では食や芸術がどのように一般の人々の生活に入り込んでいったのか。最終話ではそのことに関する事例と要因を解説していく。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:14
収録日:2022/09/09
追加日:2023/03/05
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●古代中国の激しい宴会文化を伝える記録の数々


―― さまざまな発見の中で、先ほど(第4話)殷の時代はお酒を飲み過ぎて、「酒を飲んでも飲まれるな」のような話が周の時代にあったというお話がありましたけど、酒の失敗談で何か面白いものがあったりするのですか。

柿沼 (そこは)ひどいですね。

―― ひどいですか。

柿沼 ひどいです。これも僕がおそらく一番自己満足で楽しみました。プライベートな話で恐縮ですけど、僕は早稲田出身です。早稲田生は世間に迷惑をかけています。僕はそうでしたけど、コロナ禍の前、高田馬場でいつも飲んで、早慶戦などがあると新宿でキャーキャー騒ぐわけです。

―― 大学生の微笑ましい光景でございますね。

柿沼 微笑ましいと思うか、あるいは教員からするともうどうしようもないと思うかですけど、年を取ってくると自分も慚愧の念に堪えませんという形で、申し訳なかったと。逆に、自分もやったので学生には強く怒れません(笑)。

―― まあ、そうですね。わかります。振り返ると。

柿沼 でも、ポジション上、怒らないといけないのです(笑)。という色々な思い出がある人は少なくないと思います。そういった視点で中国古代史の例を見ると、何度もいっていますが、政治史とも経済史とも関係ない、要するに中国古代の人は寝ゲロをしたことがあるか、あるいは酔い潰れて仕事に失敗したことがあるか、「イッキ」の文化はあったのか、飲み会コールの文化はあったのか、どれくらい飲めると酒豪認定されるのか、とか。このようなものはほとんど研究がないわけです。おそらくやっても意味がないと思われているからです。

―― これらは我が身を振り返ると、いくつかありそうですけど。

柿沼 そうなのです。僕にとってはそれがとても面白くて、調べると山ほどあります。しかも男女合わせてすごく飲んでいて、ほとんど笑い話です。ある女性は飲み過ぎて、帰るときにウワッとゲロを吐いた後に「私は毒を盛られたのだわ」と。絶対酔っ払っているのですけど、そう思って、その吐いたゲロを自分でなめて、「あっ、毒じゃないわ」といった記録があるのです。どこで笑っていいのかわかりません。

―― それは笑い話として書いてあるのですか。

柿沼 いや、わかりません。けっこう有名な女性なので、これが政治史の部分に関わってくるのです。

―― 毒殺かどうかということ...
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