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始皇帝の時代に餃子はなかった?古代中国の日常に迫る

古代中国の「日常史」(3)出土物から探る古代中国の日常生活

柿沼陽平
早稲田大学文学学術院教授
概要・テキスト
古代中国史研究で活用される史料は木簡や竹簡だけではない。今まで重要視されていなかった史料に再注目することで古代中国の日常風景が浮かび上がるのだ。様々な出土品から分析される日常史の事例を具体的に見ていく。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:21
収録日:2022/09/09
追加日:2023/02/19
カテゴリー:
≪全文≫

●様々な出土物が、見過ごされてきた当時の生活を探る史料になる


柿沼 問題はそれだけではないということで、日常史をいざ研究しようということになると、従来博物館とか、美術館で見飛ばしていたものがすべて史料として使えることになります。

 例えば、建物の形はどんなものか。あるいは中国古代の人はキスをしたことがあるのか。これはくだらないことかと思われますが、例えば真ん中の石像です。中国古代の2人がキスしているシーンです。僕はこれを見て、けっこう感激しました。「あっ、キスしているのだ」と。「いや、キスくらいするだろう」と安易に思ってしまうのは現代人であって、2000年前の人が本当にしていたかは意外にわかりません。

―― たしかにそうですね。

柿沼 そういう愛情表現があるかどうかが分からなかったのです。あるいは右上のものはレリーフですが、お墓の壁画に彫られたもので、石に彫っているので「画像石」といいます。煉瓦に彫っている場合は「画像磚(せん)」といったりします(スライド下段の左から2つ目にその字が書いてありますが)。こういったものも市場の様子を描いているものです。

―― これは市場なのですね。

柿沼 ええ。右上の図の一番左側のところに「市門」と書いてあって、これが市場の様子であることがわかります。こういったものを見ると、市場はこんな感じだったのだとわかったりもしますし、これと文献を照らし合わせると、「ああ、一致するね」とか、「これはこのことを描いているのか」といったことがわかります。

 あるいはこれ(右の上から2番目)もまたお墓から出た絵ですけど、壁画です。先ほど、お墓の中にこんな史料があるのですかと鋭い質問があり、わからないと答えましたが、色々な仮説はあり、はっきり言ってよくわかりません。壁画も(その理由は)はっきりとわかりません。この壁画に何が描いてあるかというと、字もあって、「肉をかじる」と書いてあります。焼き鳥のようなことをやっているのです。

―― これは串に刺さった肉なのですね。

柿沼 そうなのです。左側に焼き鳥というか、鳥ではないかもしれませんが、シシカバブのようなものを持っています。これをどうして、死者のお墓の中に壁画として描くのかということはわからないのです。当...
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