古代中国の「日常史」
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
歴史書が描く「英雄の歴史」ではわからない古代中国の二面性
古代中国の「日常史」(2)「木簡」「竹簡」でみる古代中国の日常風景
柿沼陽平(早稲田大学文学学術院教授)
紙が普及する以前、古代中国では木簡や竹簡に様々な記録をしていた。物として残りやすいそれらの媒体が、当時の人々の生活を調査する上で重要な史料になっている。『史記』や『三国志』などの歴史書だけでは知り得ない、古代中国の日常とはどのようなものだろうか。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分13秒
収録日:2022年9月9日
追加日:2023年2月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●日常史研究の意義:時代の二面性をバランスよく描く


柿沼 日常風景というのは千差万別に色々とあるわけですけど、いざ調べ出すと、従来目に付かなかった史料が目に付くようになります。例えばここに挙げた2人の人物は、いずれも漢王朝の時代の人物です。左側は壁画で、当時の下っ端の役人です。本当に下級役人で、半分アルバイトのような働き方しているのですけど、この人たちがこういう格好をしているのだというのはこれでわかります。右側が特に面白いと思っていて、当時の女性がいかに子どもを育てていたか。お乳をあげていたか。

―― これはお乳をあげている像ということですね。

柿沼 恐らくそうですね。僕はそう解釈したのですが。

―― 場所的にいうと、たしかにそうですね。

柿沼 そういったものが従来ほとんどわかっていなかったというか、誰も興味がなかったに等しいのですが、いざ日常史を調べるということになると、こういうものにスポットが当たりました。僕個人はこれを大変面白いと思っています。従来、この像を日本の方は研究者も含めてほとんど知らなかったのではないでしょうか。おそらく誰もこういうものに興味がないので、中国では出土したまま博物館に陳列されています。日本でもきちんとした解説付きの展示などは行われていないので、こういうことを僕としては今後もっとやってほしいと思っているところです。

―― 先ほど(第1話)の太鼓を叩いている像もそうでしたが、こう見ると非常に表情豊かです。

柿沼 そうですね。今もそうですけど、古代中国には二側面あります。専制国家の時代ですから、偉い皇帝がいて、それに虐げられる民がいて、民は苦しんで泣いているという記録が一方である。その中で実は笑顔の像も残っているし、笑顔の記録もあるので、やはりどの時代も100パーセント悲劇の時代とか、100パーセント楽観的な時代というのはなくて、それをバランスよく描くという意味でも日常史は重要なのだろうと思います。


●木簡と竹簡が日常史を知る重要な手がかりになる


―― そしてその手がかりですが(、そのあたりはどうでしょうか)。

柿沼 そうですね。問題なのは手がかりで、ファクトチェックのファクトです。2000年前の記録は何があるかというと、有名なのが左側に挙げた...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保