儒家思想におけるリーダーシップ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
治水だけでなく農耕地整備や名産品選定も―禹の絶大な功績
儒家思想におけるリーダーシップ(4)禹の問題解決能力
田口佳史(東洋思想研究家)
リーダーが備えるべき「問題解決能力」は、古代中国の国王に学ぶべし。老荘思想研究者・田口佳史氏によれば、『書経』に書かれた古代中国の夏王朝の王・禹が行った治水事業には、現代のリーダーシップ論に通じる「問題解決能力」の一端が描かれているという。紀元前2000年の昔から語り継がれた、東洋的リーダーの真髄に触れる。(第4話目)
時間:10分42秒
収録日:2015年2月27日
追加日:2015年8月27日
≪全文≫

●禹は九州を回り山と川両方を治めていった


 『書経』の中に「禹貢(うこう)」という欄があり、禹がどうやって洪水を治めていったか、その詳細が記された部分があります。「九州」という言葉は日本でも使いますが、中国にも九州という言葉があります。冀州、兗州、青州、徐州、揚州、荊州、豫州、梁州、雍州を九州、要するに中国だと言っています。ちょうど禹の頃も、ほぼ現在の中国と同じような広大無辺な地域で、ここでいろいろな河川がたびたび氾濫し、洪水が起こっていたのです。なんと禹は、九州全土を回って見事にこれらを治めました。しかし、文章を読んでみますと、ただ洪水を治めただけではないことが分かります。

 まず冒頭に「禹土を敷(し)き山を随(こぼ)ち木を刊(き)り、高山大川を奠(さだ)む」とあります。これは名文です。禹が土地をしっかり平安にしました。すなわち、山を削り、木を切って平地にし、農耕地にしたという意味ですね。「高山」と「大川」ですが、この言葉には、山の神と川の神という意味が込められています。つまり、山の神と川の神との共同作業によって川が治められたのです。川を治めるには、同時に山を治めなければならないので、山と川と両方を治めていったということです。


●平地を農耕地に変え、土壌検査も行った


 第1節「冀州」から始まり、禹は九つの州を回っていろいろなことをします。まず冀州ですが、「既に壺口(ここう)を載(おさ)め、梁及び岐を治む」。これは、「壺口」という川を治め、「梁」及び「岐」も川ですが、これらを治めたということです。

 「既に太原(たいげん)を修めて、岳の陽に至る」。今でも太原という街がありますが、そこを治めて、岳の陽という所に向かい、治山治水を繰り返していきます。ですから、この文章からいえば、方法は一気呵成ではなく、川を一つ一つ整備していきます。さらに、川を整備するだけではなく、平地をなるべくうまく使い、農耕地になるようにします。農耕には水が何といっても重要ですから、ただ川を治めるだけでなく、農耕作業用の水路を非常にうまく張り巡らせて、周囲を肥沃な土地にどんどん変えていったことが、この部分に見られます。

 「覃懐(たんかい)は底(つい)に績し、衡漳(こうしょう)に至る」。これは場所や川の名前のことですが、そういうものを一つ一つ肥沃な価値ある土地に変えていったこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ