儒家思想におけるリーダーシップ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「強さ」と「優しさ」―儒教が理想とするリーダー像
儒家思想におけるリーダーシップ(2)放勳欽明・文思安安
田口佳史(東洋思想研究家)
『書経』によれば、東洋的リーダーシップとは「強さ」と「優しさ」である。部下に慕われ、夢と希望を与える存在になることが、リーダーの目指すべき到達点である。老荘思想研究者・田口佳史氏が、儒家思想の掲げる理想的なリーダー像を解説する。(第2話目)
時間:12分46秒
収録日:2015年2月27日
追加日:2015年8月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●東洋的リーダーシップは存在の説得力


 まず「放勳欽明」とは、「放つ勳(いさお)は欽明にして」ということです。放つ勲には、武士の「武」、武力の「武」が隠されています。隠されている字を表す文章は、中国古典にたくさん出てきますが、ここでは、次に説明する文思の「文」と相まって、文武両道の根本のことをいっています。つまり、陰陽を形づくっているわけです。

 「放勳」、要するに、武勲とは放たれるもの、ということです。放たれるとは、自分で自慢げに「こうやった、ああやった」と話すものではなく、また、誰かが文書にして明らかにするものでもないということです。その人の体から有無を言わせず放たれていくことが、その人のこれまでの業績なのだ、ということです。放たれるべくして放たれるべきものだということです。

 ですから、東洋的リーダーシップが西洋的リーダーシップと大きく違う点を一つ言えば、要するに存在こそが説得力を持つということです。存在そのものが説得力なのだということが東洋的リーダーシップ論の基本だというのは、そういう意味なのです。その人は何も言わないけれど、その人の体からにじみ出てくる、あるいは放たれる百戦錬磨の経験や、前回申し上げた精神基盤がとてつもなくしっかりしている、つまり人間としての総合力に満ちあふれている人物が、東洋流の理想像でした。それが、「放勳欽明」ということになると思います。


●リーダーの前提は業績を挙げること


 現代のビジネスに置き換えて説明するならば、リーダーならば業績くらいは挙げてほしいと言っているのです。業績くらいは挙げてもらわないと困るのはなぜかというと、業績を挙げた経験のないリーダーの言うことは、下の人はなかなか聞きづらく、説得力に欠けると思うのですね。自分の仕事をきちんとやってきた人、果たしてきた人がリーダーの前提になると思いますので、そういう意味で、業績くらい挙げてほしいということです。

 もう一つ、業績を挙げることは、同時に創意工夫の総決算でもあるのです。要するに、どうすればうまくいくのかは、創意工夫をする以外にありません。年がら年中、創意工夫をして、「こうやったらどうだ」「ああやったらどうだ」と言って、いろいろなことを考えて実行し、また考えて実行するという、その繰り返しなのです。そうやって、ようやく業績は挙がるものなのです。そうい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤