儒家思想におけるリーダーシップ
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より良き個人だけでなく、より良き社会のために
儒家思想におけるリーダーシップ(3)特徴と発想の原点
田口佳史(東洋思想研究家)
優れたリーダーは、周囲の人間を一致団結させ、国内外との関係すら良好なものにするだろう。老荘思想研究者・田口佳史氏は、リーダーシップについて、個人の話だけでなく、個人の力が社会をどう良くするのかまで論じたところに儒家思想の特徴があると言う。その発想の原点は、なんと「洪水」にあった。(第3話目)
時間:10分28秒
収録日:2015年2月27日
追加日:2015年8月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●個人と社会による儒家のリーダーシップ論


 とても大切なことは、「放勳欽明」と「文思安安」がリーダーの個人の在り方を示しているということです。通常、リーダーシップ論といった場合、多くがリーダーの条件やあるべき姿という個人の話で終わってしまいます。ですが、儒家は絶対に個人の話で終わることはありません。その個人のありよう、あるいはリーダーになったときの個人の力を組織や社会、国家にどう生かしていくのかというところが不可欠と考え、大きな陰陽として、個人と社会が両方設定されて初めて完璧な論になるのだ、ということを表しているのです。

 今までずっと言ってきたリーダーがリードする社会は、どうなるべきなのか。「克(よ)く俊徳を明(つと)め」の俊徳とは、目覚ましい徳のことです。「以て九族を親しみ、九族既に睦みて」の九族とは、通例いろいろな言い方がありますが、自分を中にして上の四族、下の四族のことを指すこともありますし、一家眷(けん)属全部を指すこともあります。

 どうして、ここで九族が出てくるのか。古代の王朝は全て、親族が主要なところを占めて成り立っていました。日本の歴史を見ても、鎌倉政権も徳川政権も全く同じことですね。現代風に解釈すれば、九族とは側近のことです。側近とはまずもって親しみ、親愛なる関係になるもので、側近と角突き合わせるような仲たがいをしている状態だと組織は駄目になります。組織は、立派なリーダーを慕ってやって来た人同士のサークルのようなもので、側近が皆「こういうリーダーの下で働けるなんていいね」と言いながら、親愛感を持って一枚岩になっていることが重要なのです。

 そういう側近がいるとどうなるのか。「百姓を平章(べんしょう)し、百姓昭明にして」と言います。百姓とはもろもろの姓が集まっていることですから、国民、国のメンバーということです。企業でいえば社員のことです。平章とは、現代の社会に照らし合わせていうと、身分相応の満足のことですから、「百姓を平章」とは、メンバーが身分相応の満足を心得ているということなのです。

 この世の中で犯罪がいろいろ起こりますが、なぜ犯罪が起こるかというと、基本的に身分不相応の望みを描くからです。そうすると、どうしても自分の資金では求められないとか、買えないという状態になるため、借金したり、揚げ句の果てに人から奪ってくるというこ...

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