●政治的統治はまず「水の支配」から
第2回目になります。『なぜ「中国には巨大な権力が必要なのか」』、このテーマで少しお話ししたいと思います。
皆さんご存じのとおり、中国というのは本当に中央集権国家です。歴代の王朝は巨大な権力を持ち、民主的なことをしたことは一度もありません。今日の中華人民共和国も、共産党の指導の下、巨大な権力を持っています。
なぜ、中国が民主化しないのか、あるいは分割しないのか、常に巨大な中央集権の王朝が支配しているのかという根本的な理由は、なかなか日本人にはわかりづらいのですが、中国の風土にあります。中国のことをイメージしてみて下さい。巨大な大陸です。チベットやウイグルはほとんど雨も降らない乾燥地で、黄砂もすごいです。一方では黄河や長江など巨大な河があります。中国という国は過酷な自然風土を持った国なのです。そのなかにおいて、中国では「水を支配することが政治を統治すること」と古来から言われてきました。中国で巨大な権力が必要となる理由は、この水を統治するためです。
●巨大権力の使命は自然災害のリスクヘッジ
中国は農業国家ですから、黄河や長江が大氾濫を起こすと、とてつもない被害が出ることになります。その水を支配するためには、巨大な中央集権国家がないといけないというのが大前提としてあります。中国は世界のなかでも自然災害がもっとも大きいところです。
たとえば、今から4、5年前に四川省の大地震がありました。四川省だけでも人口は1億人ですが、そこが放置されていたら立ち直れません。だから、ああいう大災害が起こると、巨大な統一国家として中央政府が「四川を助けなさい」と各省にすぐに指示を出します。「北京人民政府は経済が良くて儲かっているからいくら出せ」「広東省は中国において経済が最大だから、省としていくら出せ」などと、四川を助けるためのお金や人員を各省に割り当ててしまいます。このように大災害が起こると、各地域がこぞって応援部隊やお金を出す仕組みが、中国では古来からあります。黄河や長江が大氾濫すると数千万人の人が亡くなり、住宅や城、農業地帯が全滅してしまいます。そこを助けるためには、周辺の人たちが協力しなくてはいけません。その人たちの財力や人力を集めて投下するためには、巨大な権限を持った人がいないと出来ないのです。したがって、自然災害が起こったとき...