「三国志」の世界とその魅力
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
赤壁の戦いに敗北した曹操の立て直しに見る革新性
「三国志」の世界とその魅力(3)曹操の革新性(後編)
渡邉義浩(早稲田大学常任理事・文学学術院教授)
赤壁の戦いで敗れた曹操だが、この敗戦からの立て直しにこそ、彼の革新性の本質を見ることができると早稲田大学文学学術院教授の渡邉義浩氏は語る。中国統一を阻む最大の壁「儒教王国・漢」に、曹操はどのような策をもって向かっていったのか。前回に続き「曹操の革新性」について解説する。(全6話中第4話)
時間:10分47秒
収録日:2017年11月10日
追加日:2018年2月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●曹操の中国統一を困難にした要因-1.水軍の不備

 
 赤壁の戦いで敗れた曹操でしたが、その後の立て直しにも曹操の革新性が非常に発揮されていきます。実は、中国を統一するということに関しては、曹操は赤壁の戦いの後、やや諦めた感じがするのです。

 なぜかというと、中国を統一していくということは具体的には呉の孫権と蜀の劉備を破っていかなければならないわけですが、長江というほとんど海のように大きな河があるため、水軍を持たなければいけないのです。ところが、曹操の軍隊はもともと陸での戦いのための軍隊なので、水軍を持っていません。そのため水軍の養成を始めていくのですが、間に合わないと感じていたのだろうと思います。


●曹操の中国統一を困難にした要因-2.儒教大国・漢

 
 そして、何よりも呉、蜀といった国家を滅ぼすよりも、400年間続いている漢という国家を滅ぼしていく方が、よほど大変だということが予想されたわけです。それは、後漢という国が儒教に支えられていた国家だったからなのです。儒教というと、日本では朱子学のイメージが非常に強いので宗教という感じがしないと思うのですが、朱子学は朱子が儒教から宗教性を一生懸命抜いた結果として哲学になったわけで、漢の儒教はあたかもローマのキリスト教のように、国教化されて漢を支え続けたのです。

 例えば、漢という国家は孔子が『春秋』という本を書いてその成立を保証し、漢のための制度は『春秋』に著されていたのだ、といわれていた時代なのです。ですから、その時代の知識人の学ぶものは儒教ですから、諸葛亮も荀イク(ジュンイク)も漢を復興していくことを目的としていたわけです。魯肅(ロシュク)のように「漢は滅んでしまうのだ」と考えていた人は、むしろ例外的だったのです。

 そうした中で、曹操は漢を滅ぼさなければいけない、その準備をしなければいけない、と考えます。そうなると、名士は儒教的な価値基準に基づいた名声を持っているので、どうしても曹操はこの人たちとぶつかっていくことになります。荀イクという長年曹操を支えていた人を殺害してまで漢を変えていくのだという意志を示すのです。それで統一されていればいいのですが、まだ劉備や孫権がいます。しかも、劉備は漢の一族を名乗っているわけですから、漢と儒教の関わりをなんとか切らなければいけないという問題の方が、呉や蜀を滅ぼし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(37)長谷川眞理子先生の公開収録!
【アンケート&公開収録】長谷川眞理子先生:男と女でどう違う?能力の高め方
テンミニッツ・アカデミー編集部
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(2)タタールのくびきと「第三のローマ」
なぜロシアが「第三のローマ」なのか?…東ローマ帝国とモンゴル帝国の根深い影響を探る
上月豊久
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
江戸とローマ~日本酒とワイン(2)ローマの酒文化とファストフード
ポンペイのファストフード店、遺跡が物語るローマの酒文化
本村凌二
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀