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中国ビジネスの行く末を占う関羽信仰

関羽の「義」と現代中国の関係(3)華人ネットワーク

渡邉義浩
早稲田大学常任理事・文学学術院教授
概要・テキスト
関帝廟(横浜・中華街)
関帝信仰は、清朝に全盛期を迎える。その信仰がどのように広がっていったのか。シリーズ3話目では、その内容と伝播、そして中国ビジネスとの関わりについて、早稲田大学文学学術院教授の渡邉義浩氏に解説いただく。(全3話中第3話)
時間:11:21
収録日:2018/03/15
追加日:2018/08/10
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≪全文≫

●関羽信仰を広げた「善書」とおみくじ


 関羽の信仰内容について、お話ししたいと思います。三国時代の関羽は「関帝(「関聖帝君」)として信仰されていったわけです。具体的にはどんな内容を持っていて、どう広がっていったのかをお話しします。

 関羽の信仰を広げていったのは「善書」と呼ばれるものです。それほど立派な本ではなく、信仰している人たちが自分のお金で作って関帝廟に置き、誰でも持ち帰ることができるという、小さなものです。

 「善書」の代表は、『関聖帝君覚世真経(かんせいていくんかくせいしんきょう)』と呼ばれるものです。この中に書いてあるのは、「忠孝」と「節義」の強調です。

 武人として三国志時代に激しく戦っていた関羽という印象ではありません。全てのものに対する能力を持ち、さらに君子に仕える「忠」や、親孝行、男女関係をきちんとしていく「節」、そして何よりも「義」を持つ全能神たる存在として、関羽が信仰されていることが分かります。

 関羽の信仰を広げるのに大きな役割を果していくのが、「関帝霊籤(かんていれいせん)」と呼ばれるもので、「霊籤」は日本でいう「おみくじ」に当たります。日本でも、関帝のおみくじは引くことができます。横浜、長崎、神戸の関帝廟でおみくじが引けますし、横浜関帝廟はインターネットからも可能です。それらを見ていただくと、どういったものが出てくるのかが具体的に分かります。日本のおみくじとそれほど変わりがありません。

 このおみくじがよく当たると評判が高く、清朝で最も優れた知識人と呼ばれた紀インも言及しています。彼は、乾隆帝の命令で『四庫全書』という中国全土の書物を集めた九億字に及ぶような本を編纂した人です。彼も関帝を信仰していましたが、「関羽のおみくじは、なぜこんなに当たるのだ」と不思議がっていました。

 おみくじには、だいたい何でもうまく適合するようなことが書いてあります。関羽のおみくじで、ここに掲げたのは第1番の大当たりで、「大吉」と書いてあるものです。ここに書かれた漢詩の意味は、「科挙で第一番になる。富貴栄華を極めていく。仙人のように長生きできる」というものなので、これが当たったらどうしようと思われる内容です。

 このようなものを引くために、列をなして並ぶほどの熱狂的な信仰がなされていました。中国の皇帝も、毎日夕方になると関羽を拝んだ...
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